犬の散歩は、楽しいばかりではなくトラブルもつきもの。今回は足や関節、首などの頸部、あるいは耳に起こりやすいケガや炎症など、気を付けたいケガについてまとめました。
散歩中、犬の足回りで起こるトラブル
グイグイ引っ張るタイプなら特に注意
理想の散歩は、犬が飼い主のペースに合わせて、つかず離れず歩くことです。とはいえ、ペースをつかむのに時間がかかったり、うまくいかず飼い主そっちのけで気持ちの赴くまま、突進する犬も多いです。そんなグイグイリードを引っ張るタイプの犬だと、特に注意したいのが足回りのトラブルです。
肉球のケガ
犬の肉球といえば、触ってもカチカチでとても頑丈なイメージがあります。ところが、散歩の仕方によっては、この肉球を損傷することがあります。もし、散歩から帰って犬の足の裏から血がにじんでいたら、すりむけていると判断しましょう。普段は黒い角質で覆われていますが、損傷すると、その下の皮下組織から出血することがあります。
ケガをしやすいのは、リードを引っ張りながら全力で前に進もうとする犬に多く、普段屋内で過ごしている犬も注意が必要です。前へ進もうとするとき、肉球は体重の負荷を受け、さらに地面との間に挟まれているので、歩くたびに摩擦が起こります。それを全力でグイグイ突進しようとすれば、より負荷と摩擦は強くなります。
犬の肉球は元々すりむけやすい
また、本来犬の肉球は、草や土の上を歩くのに適したつくりになっています。そのため、コンクリートやアスファルトの上を歩くことも、摩擦を強める原因となっています。さらに、普段屋内で過ごしている犬の場合は、肉球を刺激する機会が少ないです。だから、少しの摩擦でもすりむけやすくなります。
肉球は一度ケガをすると、なかなか治りにくいです。変に悪化させないようにするためにも、散歩から帰ったら毎回足の裏はチェックしてあげてください。
ねんざ
デコボコ道や砂利道などを歩く場合も、ねんざをしないよう注意が必要です。そうした場所を歩くと、人でも足をひねることがありますが、犬も同じです。足場が悪いところだと、何かの拍子にバランスを崩して、瞬間的に強い負荷がかかり、靭帯を傷めたり、ねんざをしやすくなります。散歩ルートは、こうした危険が少ないところを歩くのが一番です。
関節の炎症
もう一つ足回りで起こりやすいトラブルが、関節炎です。一定以上負荷がかかることで、膝や股関節、脊椎などの関節が変形することがあります。ただ、関節炎の原因は、散歩による運動だけでなく、遺伝や免疫異常、感染症など病気によって起こる場合もあります。また、一度関節炎が起こると、完全に治すことが難しく、炎症を抑える薬を定期的に服用するなど、長期的な緩和ケアをすることになります。
散歩によって指の間や耳に起こるトラブル
通気性の悪い部分は炎症を起こしやすい
犬の体には、皮脂腺や、肛門腺などの分泌腺がいくつかあります。そうした部分が犬のニオイの元であり、大概通気性も悪いので湿っています。そして、散歩をすることで、雑菌などが入り込んで炎症を起こしやすくするので注意しなければなりません。
指の間に起こる趾間炎
足回りのトラブルで肉球のケガが起こりやすい、とご紹介しました。それと同時に起こりやすいケガが趾間炎です。これは、足指の股の柔らかい皮膚が赤く炎症を起こすトラブルです。散歩中、色んなところを歩くので、犬の足には雑菌がたくさん付着します。そして同時に、摩擦によって傷つきやすくもあります。
小さな傷が大きなトラブルになりやすい
摩擦によって、足指の間の皮膚に小さな傷ができると、そこに雑菌が入り込んで炎症を起こします。細かな傷が、かえって犬にとってはむずがゆく、なめて治そうとするかもしれません。でも足指の間は元々通気性が悪いので、雑菌が繁殖し、さらに唾液の水分が加われば、一晩たったらボンボンに腫れてしまうこともあるので注意が必要です。
たまになら気にしなくてもいいですが、ずっと足の間をなめているようであれば、趾間炎が起こっていないかチェックしてみてください。炎症が起こっても舐め続けるようであれば、治るまで「エリザベスカラー」をつけておくのも一つの方法です。
外耳炎
足指の間と同じで、耳も通気性が悪く、雑菌が繁殖しやすい場所の一つです。耳に起こりやすいトラブルが外耳炎です。特にたれ耳の犬や、耳の毛を抜いていない犬の場合、汚れがたまりやすく、不潔になりがちです。入り組んだ構造なので、こまめなケアが必要です。
散歩のあとは清潔に
炎症トラブルを防ぐには、まず清潔にすることが第一です。散歩のあとは、できるだけ通気を良くして乾燥させます。できれば殺菌シャンプーなどで軽く洗うとベターです。タオルなどで拭くときは、ぞうきんを使うとさらに雑菌が付着することがあるので、避けてください。また、指の間をふくときは、ゴシゴシこすると傷つけやすいので、優しく扱うようにしましょう。
散歩ルートはケガ防止のため犬の歩きやすさを重視!
帰宅後は一度全身をチェックしよう
犬にとって楽しい散歩も、行き過ぎるとケガやトラブルを起こしやすくなります。引っ張り癖がある犬の場合は特に足回り、首回りのケガに注意しましょう。なるべく負担を減らせるようにするためには、平坦な道を選ぶことが大事です。また、首輪やハーネスを皮膚に優しいものにしてみましょう。
じっくりチェック、ただしゴシゴシしないで
元々犬の肉球は、コンクリートやアスファルトの上を歩くとすりむけやすいので、帰宅後は一度全身に異常がないかチェックすることも大切です。足指の間や、耳など通気性が悪い部分は、雑菌が入ったり、犬がなめたり触ることで悪化しないよう小さな傷も注意して確認しましょう。
ただし、清潔にしてあげるつもりが、ゴシゴシしすぎてかえって傷つけないように注意しましょう。一度ケガをすると、治りにくいケースも多くあります。あまりひどいと散歩に行けなくなることもあるので、早めに見つけて治してあげることが大切です。
散歩の仕方で首にもケガや炎症を起こしやすい
首輪選びやしつけがトラブル防止の元
グイグイ引っ張りながら先へ行こうとする犬の場合、首回りにもケガを起こしてしまいます。そしてそれを防止するためのポイントは、首輪選びとしつけにあります。
頸部圧迫による湿疹
散歩で起こしやすい首回りのケガの一つが、首輪による頸部圧迫です。いつも引っ張りながら歩く、という犬の場合は要注意です。ひどくなると、首の周りにぐるりと湿疹ができることもあります。
擦れや脱毛
圧迫だけでなく、こすれることにより、湿疹が脱毛にかわることもあります。場合によっては皮膚が完全に擦り切れ、潰瘍化することもあります。その状態になると、治ったあともその部分は毛が生えてこなくなります。特に、首の下は圧力がかかりやすく、ダメージが大きくなりやすいので注意しましょう。
ひどくなると、治りは遅くなるのはもちろん、治療も厄介になります。散歩の後首輪を外したとき、擦れたり、異常がないかなど確認するようにしましょう。
皮膚に優しい首輪やハーネスに交換
トラブルを防ぐ第一の方法は、犬自身にグイグイ引っ張らないようにしてもらうことです。そのためには、しつけをするしかありませんが、しつけをするには時間もかかります。そのため、ひとまずの対策としてできることは、首輪を皮膚に優しいタイプのものに変えることです。
例えば幅広のものや、柔らかい素材のものの方が、接触面が多くなり、皮膚あたりが優しくなります。首のケガやトラブルは、細い首輪や、チェーンなど肌に当たる部分が粗いもののことが多いからです。また、ハーネスも細いものではなく、幅広のものを用意しましょう。
あくまでしつけが第一
ただし、ハーネスの場合は交換すると、快適になりすぎて、余計犬が先へ行きたがる可能性があります。あくまでしつけ先行で、首輪やハーネスは補助的な役割として使うことが大切です。
犬の散歩で起こしやすい足・首・耳のケガやトラブルと防止策
- 散歩ルートはなるべく足場のいいところ、平坦な道を選ぶのが関節炎やねんざ、足回りのトラブルを防ぐポイント。
- 肉球は頑丈に見えて、摩擦が起こって出血しやすいので、帰宅後異常がないかチェックしよう。
- チェックするときは肉球だけでなく、指の間まで確認を。通気性が悪いので、小さな傷でも雑菌が入って悪化することがある。同様に、耳も通気性が悪いので清潔を保とう。
- 引っ張り癖がある犬は、首のケガやトラブルにも注意をしよう。しつけをするのと並行して首輪やハーネスを見直そう。