一般的な猫の動きというと、いつも身軽で、のびのび自由に行動するイメージではないでしょうか。そんな猫の行動が、いつもと違っておかしいと感じたときは、病気の心配をした方がいいでしょう。猫の異常な行動には、体の異変や食欲、睡眠、排泄などさまざまなパターンがあり、歩行異常や、触られるのを嫌がるといった行動が見られる場合があります。
歩行異常や触られるのを嫌がるなどの兆候がある場合は、ケガや関節炎、耳の病気、あるいは内臓疾患などの可能性が考えられることは別のページでご紹介しました。そこで今回は、いつもと違う動きでおかしなと感じる中でも、動くこと自体を嫌がる場合から、突然の転倒やけいれんなどの行動異常で、キケンな病気の可能性についてご紹介します。
目次
動くこと自体を嫌がる場合に考えられる病気について
単なる肥満が原因だけじゃない病気の可能性に注意
まず注意したい行動の一つが、猫が動くこと自体を嫌がるようになったときです。人間も太ると動きがゆっくりになったり、なかなか次の動作にいけなくなることがありますが、それは猫も同じです。ですが、単に肥満猫だからといって、動くのを嫌がるようになるわけではありません。病気が関係している可能性があります。
猫が動くのを嫌がる場合に心配な病気の種類
猫が動くことを嫌がるようになったら、次のような病気の可能性を疑ってみてください。
- 心筋症
- 猫伝染性貧血
- 横隔膜ヘルニア
- 骨折、関節炎、椎間板ヘルニア
- 急性・慢性膵炎
- 脂肪組織炎
あわせてこんな症状がないかをチェックしよう
動くのを嫌がるようになった場合に考えられる病気は複数あり、中には心筋症のように初期症状はほとんどなく、急に麻痺を生じるなど重症に陥るケースがあります。そのため、動くのを嫌がっていると感じたら、次のような様子がないかチェックしてください。
- 元気がない、食欲不振
- 抑うつ状態
- 嘔吐や下痢
- 咳をする
- 歯茎が白い、息が荒い
- 発熱
- 皮下脂肪やおなかの中にしこりを感じる
心筋症の場合、症状が進行すると、ぐったりうずくまったり、咳などの症状が見られることがあり、猫伝染性貧血だと歯茎が白くなったり、発熱などの症状がみられます。貧血は症状が進行すると、黄疸や呼吸困難を起こすこともあるので注意が必要です。さらに、脂肪組織炎の場合は、皮下脂肪やおなかを触ったとき、ゴツゴツしたしこりが感じられることがあります。
予防することである程度防げる病気もある
病気によっては、ある程度予防ができるものもあります。例えば膵炎や横隔膜ヘルニアは、交通事故などで腹部を強打したり、ウイルス感染で起こることもあるので、室内飼いを徹底し、ワクチンを接種することで防ぐことができます。
室内飼いにすることは、ノミやダニから感染する恐れがある猫伝染性貧血の予防に有効です。室内での生活環境を清潔に保ち、家の外の猫との接触を避けることで予防効果を高められるはずです。また、食生活を整えることも脂肪組織炎へのリスクを減らすのに有効です。
ただし、横隔膜ヘルニアは先天性疾患の場合も多く、室内飼いにして事故を防止し生活環境を整えさえれば、すべての病気のリスクをなくせるわけではないのが実状です。他にも、心筋症の予防方法は今のところ見つかっておらず、早期発見・早期治療が重要になります。
猫が急に転倒、けいれんなどを起こした場合に考えられる病気について
慌てず症状が治まるのを待つことが大切
猫の突然の行動の異常に、急な転倒やけいれんがあります。それまで普通に行動していた猫が、急に倒れたりけいれんを起こしたりすると、飼い主としてはパニックですよね。しかしここでびっくりして大声をあげたり、抱きかかえ上げたりすることは厳禁です。場合によっては症状が悪化することがあるからです。
できるだけ落ち着いて冷静に対処するためにも、どのような病気の可能性があるか知っておきましょう。
急な転倒、けいれんで考えられる病気の種類
- てんかん
- 脳腫瘍
- 水腎症、尿毒症、急性腎不全などの腎臓疾患
- 肝リピドーシスなどの肝臓疾患
- 中毒、熱中症
猫が急に転倒したり、けいれんを起こしたりすることでまず考えられるのは、てんかんです。てんかんの場合、手足に硬直が起こることもあります。ですが、てんかんであれば数秒から数分で発作が治まることが多く、その後なにもなかったように元に戻ることがほとんどです。また、同じ脳の障害で、脳腫瘍が影響してけいれんが起こることもあります。
他にも、腎臓や肝臓の病気が原因となって、けいれんを起こして転倒する場合や、玉ねぎなど食べてはいけないものを口に入れたことで中毒症状を起こしたり、夏場などは熱中症から症状を引き起こすこともあります。
猫にこんな症状が見られないかもチェックしよう
水腎症や尿毒症、肝リピドーシスなど、腎臓や肝臓の機能低下からけいれんを起こした場合は、他にも次のような症状が出ることがあります。
- 食欲低下、食欲不振
- 嘔吐
- 下痢
- 口臭がきつい
- 体重減少
- おしっこの量が減る
- 黄疸
水腎症は、尿路がふさがれることで、排泄されるはずのおしっこが腎臓内にたまり、腎臓が腫れあがる病気です。そのため、おなかを触るとしこりを感じる場合もあります。
また、急性腎不全は、心不全が原因になることもあるようですが、おしっこの量が減ったり、まったく出ないなどの症状が兆候として表れるようなので注意して観察するようにしましょう。急性腎不全は、治療が遅れると脱水を引き起こし、命の危険もあります。おかしいと思ったらすぐに病院へ連れて行きましょう。
さらに、肝リピドーシスなど肝臓に原因がある場合は、目や口の粘膜が黄色くなる黄疸が表れることもあります。
他にも、猫がてんかんで転倒したり、けいれんを起こすケースというのは、ケガや病気が原因で起こる場合が多いようです。例えば脳炎や脳腫瘍、肝性脳症、あるいは猫伝染性腹膜炎などのウイルス感染が引き起こすことが多くあります。
定期健診や早めの治療で悪化を防げることも多い
急な転倒やけいれんを引き起こすような病気は、飼い主とっても心配な、できるだけ避けたいトラブルです。ですが、残念なことに、ワクチンなどで予防できる病気ではありません。
ただ、腎臓や肝臓の状態は、血液検査をすればわかります。さらに、年1回の定期健診を受けることで、てんかんを引き起こしそうな病気の予防や、早期発見につなげられることもあります。また、肝リピドーシスの場合は肥満が元で起こることも多いので、普段の生活習慣を改善することによって予防できる可能性もあります。
その他、中毒症状や熱中症についても、猫にとって危険なものを口に入れないように隠したり、室内温度を調整するなどして予防してあげましょう。
異常行動が見られたらストレスが原因の「常同障害」の可能性も
猫も心の病気にかかることがある
猫は繊細な心を持っていることが多く、それゆえにちょっとしたことでもストレスを感じやすい動物です。うちの猫に限って・・・という油断は禁物です。特に、もしも何度も同じような行動を繰り返すという異常行動が見られたら、「常同障害」かもしれません。
常同障害とは?
常同障害は、遺伝によるものもあるようですが、多くは生活環境によるストレスが原因で起こる病気と言われています。具体的には、次のような行動を繰り返し、それ以外のことには無関心な様子が見られることが多いです。
- 自分の体の同じところをなめ続けたり、噛んだりする
- 自分のしっぽを追い掛け回す
- 何もない空中をずっと見つめ続ける
- やわらかい布などがあれば、吸い続ける
常同障害を見分けるポイント
多かれ少なかれ、猫は体をなめたり、ぼんやりしたり、しっぽを追いかけるような遊びをすることがあります。あるいは子猫時代の癖が抜けきらず、布などを吸う癖が抜けない猫もいます。しかし、回数が以前より増えたり、行動がエスカレートしてきたら注意が必要です。
もし「おかしいな」と感じたら、お気に入りのおもちゃや、普段遊びに使っているおもちゃを猫に見せて、反応をうかがってみてください。おもちゃに興味を示し、行動を止めるようであれば、ひとまずは様子を見て大丈夫です。
しかし、おもちゃを見せても全く反応しない、あるいは反応はするものの行動を続ける場合は、猫自身が「同じ行動を止められない」状態、常同障害になっている可能性があります。一度かかりつけの獣医に相談しましょう。
放っておくと抜け毛などの原因に
常同障害は、放っておくと誤食や抜け毛の原因になるため、変だなと気づいたら、何がストレスか原因を見つけることが重要です。例えば引っ越しなどで生活環境が変わった場合や、トイレやご飯皿が汚れているなど、ちょっとしたことがストレスになっているかもしれません。
また、他に何匹か猫を飼っている場合や、同居する家族に小さい子どもがいる場合は、それがストレスになることもあります。猫によって、何がストレスに感じるかは異なりますので、安心して暮らせるよう、普段から気遣ってあげましょう。
猫がいつもと違うおかしな行動を見せるときは注意して観察を
突然の異常行動には落ち着いて対応しよう
猫の行動異常には、いろんなパターンがありますが、いつもと少し様子が違うなと感じたときは他にもおかしなところはないか、注意して観察することが大切です。
特に、急な転倒やけいれんを起こした場合は、飼い主自身がパニックにならないようにしましょう。てんかんが原因の場合は、焦って揺さぶったり大きな声を出したりすると、症状が悪化する場合があります。難しいでしょうができるだけ冷静に、状態を確認し病院に連絡するなどの対応を心がけましょう。
猫によっては、ストレスから異常行動を起こすこともあります。まさかうちの猫が・・・などと思わず、普段から猫が落ち着いて生活できる環境を整えてあげることも必要です。
猫が動かない、急に倒れた、同じ行動をする・・・こんな時心配な病気について
- 心筋症や横隔膜ヘルニア、膵炎などが起こると、ぐったりして動かなくなることがある。食欲や嘔吐、下痢、貧血などの症状が出ていないか確認しよう。
- 急な転倒やけいれんは、てんかんや腎臓、肝臓機能の低下、中毒症状などの可能性がある。黄疸が出ていないか、それまでの食欲や、おしっこの量を思い出そう。
- 病気によっては症状があまり出ないものや、予防が難しいものもあるので、普段から病気の感染リスクを減らしたり、定期健診を受け、早期発見・早期治療を心がけましょう。
- いつも同じ行動をしたり、おもちゃにも反応しなくなるようであれば、常同障害の可能性かも。ストレスになっている原因を探して改善しよう。