地域猫活動をご存知でしょうか?ボランティアや地域に住む住民たちで、その地域に住む猫たちを見守っていく活動で、全国的にも注目を集めています。今回は、野良猫と人とが一緒に暮らせる社会を目指す、地域猫活動の目的や参加する方法についてご紹介します。
地域のボランティアが行う地域猫活動の取り組み
地域猫の意味と活動の目的とは?
地域猫、という言葉に聞きなれない方も多いかもしれません。そこでまずは、地域猫の意味や、活動の目的について解説します。
地域猫は野良猫とはちょっと違う
地域猫とは、特定の飼い主はいない猫であり、猫が住んでいる地域の住民やボランティアたちの管理のもと、ご飯を食べ、生活している猫です。一見野良猫のように見えるかもしれませんが、地域猫はきちんと去勢・避妊手術をし、ご飯だけでなくフンの回収まで行われるなどの違いがあります。
地域猫の目印は「耳」
街を歩いていて猫に遭遇したとき、野良猫のように見える猫の耳先がV字にカットされていたら、地域猫のしるしです。カット方法は地域によって若干異なるようですが、何らかのカットが入っていれば、去勢・不妊手術をした地域猫である、と思ってください。
地域猫活動の目的とは?
地域猫活動の目的は、飼い主がいない猫をできる限りなくすことです。野良猫の寿命は3~4年といわれていますが、保健所に連れていかれて殺処分される猫の数も多く、その大半は生まれたばかりの子猫と言われています。そこで地域猫活動をすることで、生まれてきた猫がしっかりと一生を全うできるように、ルールを決めて見守ろうという目的で生まれました。
地域猫活動の具体的な内容について
ルールを守ることが活動する上で大前提
地域猫活動の目的は、殺処分される猫を減らし、猫が猫として一生を全うできるようにサポートすることです。とはいえ、ただ単純に守るだけでは、猫の数は減るどころか繁殖してどんどん増えてしまいます。そのため、地域猫活動をする場合は、決められたいくつかのルールを守って活動することが絶対条件となっています。
地域猫活動は「TNR」活動
地域猫活動の具体的な活動内容は、「TNR」です。TNRの意味は次の通りです。
- T=Trap(捕獲)
- N=Neuter(不妊・去勢手術をして)
- R=Return(元の場所へ戻す)
上記のように地域猫活動では、猫に去勢・避妊手術を行うことが必須となっています。去勢・避妊手術をせずに放置していると猫は元気ですが、その分繁殖活動が行われ、数が減ることはありません。ですが、手術を行うことで、野良猫の数を安定化させる効果が期待できます。
さらに次のようなプラスの連鎖が起こりやすくなります。
- 去勢・不妊手術をした猫たちからはこれ以上子猫が生まれず、増えなくなる。
- 猫は発情期や出産のストレスから解放される。
- 感染症予防にもつながる。
- 猫同士のケンカが少なくなる。
- オス猫のマーキングのニオイが軽減される。
このほかに人間も、不快に感じやすい猫のケンカや発情期独特の鳴き声から解放されます。
地域猫活動は周辺環境にまで配慮することが大切
地域猫活動は、ただ猫を捕獲し手術をして終わりではありません。猫のご飯や、排泄物の面倒まで見た上で、後片付けまですることが活動です。
- 猫にご飯を与える。
- 猫がご飯を食べ終えたら速やかに食器を片付け、置きっぱなしにしない。
- 周辺を見まわし、必要であれば掃除をする。
- 野良猫用のトイレを設置し、回収する。
- フン尿対策をする。
こうして管理することで、猫は地域猫として毎日きちんとご飯をもらい、トイレを利用し、一生を穏やかに過ごすことにつながります。
人間も、「猫が好き、猫を助けたい」と思っている人は、去勢・避妊手術をした上で、猫におなか一杯食べさせてあげられるので、「野良猫にエサをやっている」と文句を言われることなく、猫を守ってあげることができます。
「猫が嫌い、野良猫なんていない方がいい」と思っている人も、地域猫活動がきっちり行われれば、家の敷地内に猫が排泄することもなく、猫のケンカや発情期の声で悩まされることもなくなるはずです。
そのため地域猫活動は、「野良猫を減らす」ことで猫好き・猫嫌い両方の人にメリットがあり、人と猫とが、仲良く一緒に共生できる社会を作ることにもつながると考えられています。
地域猫活動には反対の意見もある
猫を守り、人との共生を図ろうと、地域猫活動が盛んになりつつある一方で、反対派の人もまだまだ存在します。
反対される理由には、現実にはまだまだ猫が自宅の庭へ侵入し、ふん尿被害が起こっていることや、猫にご飯を与えたあと、きちんと片づけをしない地域猫活動者がいることなどが影響しています。
さらに、地域猫活動を行うことで、「ここなら地域猫活動がされているから、捨てても面倒を見てもらえる」と、不届きな飼い主が現れる危険性もあるようです。こうした自覚のない飼い主のせいで、せっかく野良猫を減らそうとしても猫が増えてしまえば元も子もありません。
地域猫活動は、猫の命を守る上で意味のある行動ではありますが、まだまだ全ての問題がクリアになっている、というわけではありません。そのため、活動に参加する人と地域に住む人とが理解し、協力し合う関係になることが何より大切なことといえます。
地域猫活動への参加方法
まずは情報収集をしてみよう
地域猫活動は、全国各地で盛んになりつつあります。地域猫活動に興味を持った場合、どのように参加すればいいのか、情報収集の方法について調べてみました。
インターネットで情報収集
手軽に情報収集するのであれば、インターネットがおすすめです。NPO法人や地域猫活動を行っているボランティア団体のサイトなど、さまざまな情報を見ることができます。自分の住んでいる地域の周辺で活動が行われているようであれば、一度話を聞きに行ったり、参加してみるのもおすすめです。
自治体に問い合わせてみる
地域猫活動は、自治体の中でも補助金などを設け、活動を支援するところが増えてきています。自治体のホームページを調べて活動についての情報を調べたり、直接市役所や保健所などに行って問い合わせてみるのも有効な手段です。
自治体によっては、地域猫活動を行うために参加人数や猫の把握などの条件が設けられていることもあるので、もし活動を始めるのであれば、それまでに確認しておきましょう。
地域猫活動がペットロスから立ち直るきっかけになることも
猫を亡くしたあと、ペットロスに陥る人も多くいますが、地域猫活動を行うことが立ち直るきっかけになったという人も多いようです。自宅で飼うわけではありませんが、猫に触れ合う機会を作ることで、愛猫を亡くした悲しみが癒され、生きる活力になるケースもあります。
地域猫活動は人と猫との架け橋となる存在
活動に参加する際はルールを守って行動しよう
地域猫活動は、野良猫に去勢・避妊手術を行った上で猫にご飯を与え、フンを回収して、猫の一生を見守っていくことです。手術をすることで、猫の数を安定させ管理することができるとともに、猫自身もストレスや健康にプラスになり、人間も生活しやすくなるというメリットが生まれます。
賛否両論はありますが、自治体からの支援も増加傾向にあり、ペットロスなど傷ついた心を癒す働きにもなりえる活動といえます。ただし、参加する場合はきちんとルールを守って活動することが第一です。インターネットなどの情報から、参加できる地域が見つかることもあるので、興味のある方は情報収集から行ってみてはいかがでしょうか。
地域猫活動とは?活動の目的や内容、参加方法について
- 地域猫とは、特定の飼い主がいない猫で、猫が住む地域の住民やボランティアたちの管理のもと、生活している猫。耳にカットが入っているのが特徴。
- 地域猫活動は「TNR」(捕獲し去勢・不妊治療をして元の場所へ戻す)が大原則。その上で、猫にご飯を与え、トイレの設置やフンの回収、清掃、食器の後片付けまでを行う。反対派もいるので、しっかりとルールを守って活動することが大切。
- 去勢・不妊手術をすることで、猫は発情期などのストレスから解放され、感染病予防にもつながる。繁殖能力がなくなるので野良猫の数も安定しやすくなり、人間も猫のケンカや発情期独特の鳴き声、マーキングのニオイなどから解放されやすくなる。
- 地域猫活動の情報は、インターネットや自治体などから収集してみよう。
- 愛猫を亡くし、ペットロスに陥っている人も、地域猫活動で猫たちに触れ合うことで立ち直るきっかけをもらえる可能性がある。