猫がワクチン接種できる病気は6種類あり、いくつかを混合したワクチンを接種するのが一般的です。ですが、室内飼いなら病気の感染リスクは低く、予防接種は必要ないのでは?と考えられる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、なぜ猫のワクチン接種が必要なのかについてご紹介します。
猫のワクチン接種が必要といわれる理由は?
ワクチンは命に関わるリスクを最小限に減らすための対策
猫にワクチン接種が必要といわれる理由はいくつかあり、どれも猫を命の危険から少しでも遠ざけるためのものです。具体的には次のようなポイントから、必要だといわれています。
「たかが風邪」が命を奪う可能性がある
猫の風邪、といわれる病気に「猫ウイルス性呼吸器感染症」と呼ばれる、猫カリシウイルス感染症やウイルス性鼻気管支炎があります。くしゃみや鼻水、発熱などといった、人間の風邪のような症状が出るのが特徴です。
人間なら、風邪は他の病気に比べるとそこまで深刻ではなく「寝ていれば治る」と思われています。ですが、猫の風邪はそうはいきません。猫は食べ物をニオイで判断します。そのため、風邪によって鼻が利かなくなると、食べ物を置いていても「食べられないもの」と判断して食欲の減退に直結します。そうなると次第に衰弱してしまいます。
風邪一つとっても、猫にとっては命取りになりかねません。ワクチンを打てば、100%病気にならないわけではありませんが、リスクを減らすために接種する必要があるといえます。
ワクチン接種のおかげで軽い症状で治まることが多い
猫にワクチン接種をしておくことのメリットは、病気になっても軽症で済む確率が高くなります。先ほど取り上げた猫風邪も、ワクチンを打っておけば重症化するのを防ぐことができます。
猫の病気には、細菌やウイルス、寄生虫などと、原因になるものはさまざまです。中でも、直接殺すことができないウイルスは、体の中に免疫抗体を作っておかなければ、退治することが困難です。ワクチン接種は、その抗体をつくるためにも必要です。
室内飼いでも安心できない感染のリスク
最近は、猫を室内だけで飼う人が増えています。そして、家の中にいるのだから、命に関わるような病気に感染することはなく、ワクチンも必要ないのでは?と思われる方も多いです。ですが、ウイルス感染は、人から猫へと起こる場合もあります。
猫好きの人なら外で感染した猫に触れる機会があるかもしれません。そうでなくとも、何かの拍子に靴や服に感染した猫の糞便や唾液がつく可能性はあります。あるいは、来客やペットシッターがウイルスを運んでくるかもしれません。猫を外に出さなくても、窓を開けていれば、外を通る犬や猫がウイルスを運んでくることもあります。
だから家の中で飼っているからと言って、絶対感染しないということはないのです。
ワクチン接種は定期検診にもなる
かかりつけ獣医とのつながりを深めるのに役に立つ
猫のワクチン接種は病気そのもののリスクを減らすと同時に、かかりつけ獣医との絆を深めるのにも役立ちます。
愛猫のことを知ってもらうきっかけになる
かかりつけの獣医とこちらが思っていても、獣医にはたくさんの患者がいます。自分の猫のことを認識してもらうためにも、ワクチン接種などの機会を利用して、話をする機会をつくるのは有効的な手段です。
猫のことを理解してもらいやすい
定期的なワクチン接種で獣医に会う機会を作ることにより、かかりつけの獣医にも愛猫の性格や癖を理解してもらうことができます。さらに、ワクチン接種と定期検診を兼ねることもできるので、病気の早期発見にもつながります。
猫は年齢とともに病気やケガのリスクが高まり、何かと病院にお世話になる機会が増えがちです。いざというとき、いきなり病院に連れて行くよりは、日ごろから獣医に猫のことを知っていてもらうことにより、適切な処置を受けることができます。
飼い主自身も相談する機会が作れる
ワクチンは猫の定期検診であると同時に、飼い主が獣医に相談できる良い機会でもあります。猫のしつけなどの悩んでいることや、気になること、心配なことがあれば、尋ねられるチャンスと思って利用しましょう。
ワクチンの接種時期と注意点
ワクチン接種のタイミングや内容は獣医とよく相談を
猫の健康のために大事なワクチン接種ですが、猫によっては負担が大きく、体調を崩したり副作用がでることがあります。ワクチン接種のタイミングと合わせて、獣医とよく相談することが大切です。
一般的な接種のタイミングは生後2か月をすぎてから
一般的な猫のワクチン接種は、母乳をもらっていた猫の場合、初期抗体が切れる生後2か月を過ぎてから1度目のワクチンを接種し、さらに1か月後にもう一度接種します。2回目のワクチンは、より強力な免疫をつくるためのものと言われています。そして、3回目以降は年に1回行うのが主流です。
ただし、母乳をもらわずに育った猫の場合は、最初のワクチンを生後1か月を過ぎて打つこともありますし、生後2か月以上の猫を保護した場合は、すぐに1回目の接種が必要です。
ワクチンによる副作用のリスクとは
猫によっては、ワクチン接種をすることで「アナフィラキシーショック」を起こすことがあります。具体的な症状には、次のようなものがあります。
- 発熱
- 食欲不振
- かゆみ
- 顔が膨れる
- 下痢
- じんましん
副作用は2~3日で落ち着くことが多いようですが、病院によっては、副作用が出やすい猫のためにステロイド注射や点滴、薬の投与によって症状を和らげる工夫をしてもらうことができます。
さらに、ワクチンにも次の2種類があります。
- 不活性化ワクチン:ウイルスを死滅させた状態で使われているワクチン
- 生ワクチン:生きたウイルスを使って作られたワクチン
不活性化ワクチンは、ホルマリンなどにウイルスなどを処理し、感染性を失わせた状態でワクチンを作っています。生きたウイルスを使って作った生ワクチンに比べると、抗体が弱く免疫力は低めですが、アレルギーや副作用が出にくいというメリットがあります。ただし、不活性ワクチンも体内に「筋腫」を作りやすくなるといわれており、メリットばかりではないようです。
かかりつけの獣医と相談しよう
副作用が出るかどうかは、猫の体調や健康状態によります。そのため、獣医とよく相談し、接種をするかどうかや、どの混合ワクチンにするかなどを決めるのがベターです。
もし副作用が出たとしても、症状は2~3日で落ち着くことがほとんどです。ですが、少しでもおかしいと感じたら病院に行くことが大切です。
猫にワクチン接種をするのは病気になっても軽症ですむようにするため
かかりつけの獣医との信頼関係を強めるのにも有効
猫のワクチン接種は、病気にかからないようにするためというよりは、病気になっても軽症で済むようにするためのものです。ただしワクチンは副作用もあり、猫によっては体に負担がかかることもあります。どのワクチンを打つかやタイミングは、獣医との相談で決めるのが一番です。
また、ワクチン接種の機会を作ることは、かかりつけの獣医との信頼関係も築きやすくなるというメリットがあります。そのため、できれば、定期検診のつもりでワクチン接種をするのがおすすめです。
定期的に受診することで、獣医に愛猫の性格や体質を理解してもらうことにもつながり、飼い主も不安なことや心配なことを相談できる機会がうまれます。猫が健康で長く過ごせるようにするために、獣医に愛猫のことを診てもらえるワクチン接種は大切なチャンスといえます。
猫にワクチン接種が必要な理由と注意点とは
- 猫のワクチン接種は「病気にかからないようにする」のではなく「病気にかかっても軽症ですませるため」に必要と言われている。
- 室内で飼っていても感染リスクはゼロにはならない。
- ワクチン接種をすることは、かかりつけの獣医に愛猫のことを理解してもらったり、飼い主との信頼関係を強めることにもつながる。
- ワクチンには副作用もあるので、接種時期や接種内容については獣医と相談して決めるのが大切。