猫の体調不良は、目や耳、口、鼻など顔まわりの異常から気づくことができます。今回は、目、耳、口、鼻それぞれの部分で、どのような異常があれば病気が疑われるのかまとめました。ぜひ、日々愛猫とのスキンシップの中で、さりげなく異常がないかチェックしてみてください。
目の異常から疑われる病気とは
目ヤニや涙など、いつもと違うところはないかチェックしよう
猫の目は炎症や感染症が起こりやすい場所です。目ヤニや涙を始め、次のような異常がないかチェックすると同時に、原因や予防策についても見ていきましょう。
猫の目でこんな異常があったら要注意
- 目が赤い
- 目ヤニが出ている
- 涙が出ている
- かゆそうにしている、痛そうにしている
- 目をしょぼしょぼさせている
- 目の動き、大きさがおかしい、瞳孔の大きさが変わらない
- 目の色が左右で違う
猫の目に異常がある場合、考えられる原因とは
目が赤い場合は、角膜炎や結膜炎、アレルギーなど、何らかの炎症が起こっている可能性が高いですが、細菌やウイルスに感染している場合も、赤くなることがあります。猫が感染しやすいのは、次のような病気です。
- 猫伝染性鼻気管炎
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫クラミジア感染症
特に子猫の段階で、猫伝染性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症になると、命に関わるケースが多く、危険です。鼻水やくしゃみなど、他にも症状が出ていないか観察し、できるだけ他の動物と接触しないようにして、すみやかに獣医に診てもらうようにしましょう。
他にも、目ヤニや涙が出ている場合は、ほこりや異物が入った時や、ケガをしている時などの場合が多いです。目の動きや大きさ、左右で色が違うなどの場合も何かの病気にかかっている可能性が高いので、少しでも変だなと感じたら病院へ連れていくようにしましょう。
感染症はワクチンで予防を
猫伝染性鼻気管炎や、猫カリシウイルス感染症などは、混合ワクチンがあるので、予防接種ができます。安心して過ごせるように、できれば年1回、ワクチン接種をしておくことをおすすめします。
耳の異常から疑われる病気とは
耳から変なニオイがしないかなどをチェックしよう
猫の耳も、目と同じく炎症が起こりやすい部位です。特に注意したいのは変なニオイがしないかです。放っておくと、炎症が悪化する場合もあるので、スキンシップのときなど、さりげなくニオイをチェックしてみてください。
猫の耳でこんな異常があったら要注意
- 耳から変なニオイがする、汚れている
- かゆそうにしている、痛がっている
- 耳たぶが腫れている
他にも、次のような症状がみられるときは、すぐに病院へ連れていくようにしましょう。
- 耳アカが黒い、黄色い
- 耳から出血している
- 呼んでも聞こえていない様子だったり、顔が麻痺している、首が傾いている
猫の耳に異常がある場合、考えられる原因は
猫の耳はダニなどの寄生虫や、疥癬、細菌などに感染し、外耳炎を起こすことがあります。ニオイや、耳の汚れがある場合、猫が耳をかゆそうにしている場合は、感染している可能性が高いです。放っておくと、中耳炎や内耳炎、耳血腫などに発展し、鼓膜にダメージが加わったり、聴力自体に問題が出る危険性もあります。さらにひどくなると、神経障害を起こすこともあるので、早めに診察を受けることが大切です。
猫の耳掃除は通常は不要、行う場合も慎重に
猫の耳は、元々砂漠にいた動物ということもあり、耳の奥に砂埃を落としこまないよう、耳道の入り口に脂分が出るようになっています。だから耳掃除自体、健康な状態であれば、定期的なケアはいりません。むしろ、猫の耳はとてもデリケートで、乾いた綿棒でこするだけで、顕微鏡で見ると傷がついていることもあるそうです。だから、耳掃除をするにしても、必要以上にゴシゴシすることは厳禁です。
外耳炎の原因は、ダニや細菌、真菌などさまざまありますが、飼い主の必要以上の耳掃除で、汚れを奥に押し込んでしまい、起こることもあります。飼い主としては、きれいにしてあげているつもりですが、いらぬお節介にならないよう、慎重に行いましょう。
口の異常から疑われる病気とは
歯茎の色やニオイなどをチェックしよう
口に異常があると、ご飯が食べられなくなり、体調が悪化することもあります。猫の口を開けて、歯茎や口のニオイなどをチェックしましょう。もし猫が口を触らせてくれないときは、何らかの痛みを抱えていると考えられます。
猫の口でこんな異常があったら要注意
- 口臭がする、歯垢がついている
- 歯茎が赤い
- 出血している
- よだれが出ている、よだれに血が混じっている
- 口の周りを頻繁に掻く
- 歯茎の色が白っぽい、歯茎や舌、唇の粘膜が青白い
よだれについては、薬など、猫にとって嫌な味のものを与えたり、なめさせたりしたとき、極度の緊張状態にあるときにも垂らすことがあります。ただし、食べ物を口に入れながらよだれが出ている、ご飯が食べられない状態のときは、食道やノドに異常が起こっている可能性もあるので、念のため病院で診てもらう方が無難です。
さらに、次のような症状がみられるときは、すぐに病院へ連れていきましょう。
- 口から異臭がして、多飲多尿の様子がみられるとき
- よだれが出ている状態で、ご飯が食べられない、あるいはけいれんしているとき
- 歯茎や舌、唇の粘膜が青白く、意識がない
- 歯茎や舌、唇の粘膜が黄色い
よだれが出ている状態でけいれんしている場合は、有機リン系の中毒症状が起こっている可能性があります。さらに、粘膜が青白い場合は、血液循環に障害が起こり、呼吸障害や心臓障害など重症であることが多く、黄色い場合は、黄疸の可能性が高いため、すぐに診察を受ける必要があります。
黄疸は、肥満猫が脂肪肝の状態で、何かのきっかけから3日以上ご飯を食べなくなると、「肝リピドーシス」と呼ばれる症状によって起こることもあります。肝リピドーシスを発症すると、死に至るケースもあるので、肥満猫がご飯を食べなくなった時はすぐに病院へ連れていきましょう。
猫の口に異常がある場合、考えられる原因は
猫の歯茎は、通常ピンク色をしています。もし口臭がする、歯茎が赤い、という場合は口内炎の可能性があります。そして、歯茎や粘膜が白っぽいときは、貧血が起こっているケースが多くあります。猫の口内炎は、感染症にかかっている場合や、人間の風邪薬を飲んでしまった場合、寄生虫などの原因が考えられます。口臭がした時点で病院に連れていくことをおすすめします。ちなみに、感染症で口内炎が起こる病気には、次のようなものがあります。
- 猫カリシウイルス感染症
- 猫白血病ウイルス
- 猫免疫不全ウイルス
他にも、歯石が原因で口内炎や歯周病を引き起こしていることもあります。特に高齢猫の場合、口内炎で食事を摂れなくなったり、よだれが垂れるなどの状態になることもあるので注意が必要です。また、よだれは扁桃腺やケガ、腫瘍が原因となることもあります。
日ごろから猫の口の観察、歯磨きをしよう
猫の口の異常に気付くためには、日ごろから猫の口を触り、健康な歯茎の色を把握し、さらに歯石になる前に歯磨きで取り除いていることが大切です。そのためには、子猫のうちから、猫に口を触られることや、歯磨きに慣らしておく必要があります。
もし、シニア猫で歯磨きが難しい場合や、すでに歯石が大量についている場合は、獣医師に頼んで取り除いてもらうことをおすすめします。
鼻や呼吸の異常から疑われる病気とは
鼻水やくしゃみをしていないか、呼吸の様子などをチェックしよう
くしゃみをしても、1回や2回ですぐに収まり、ご飯も普通に食べられるようであれば、そこまで心配することはありません。ですが、頻繁にくしゃみをしたり、鼻水や、呼吸の様子もおかしいときは、何らかの病気にかかっている可能性が高いです。
猫の鼻、こんな異常があったら要注意
- 繰り返しくしゃみや咳をする
- 鼻水に色がついていたり、粘り気がある、血が混じっている
- 発熱している
- 鼻が変形している
鼻水が出ていて、呼吸も苦しそうな場合や、食欲不振、水分も摂れない状態のときはすぐに病院へ連れていきましょう。さらに、鼻の様子とともに次のような呼吸異常がないかもチェックしてみてください。
- 口や鼻、胸、お腹の動きがいつもと違うと感じるとき
- 息が荒い、「ぜーぜー」という呼吸の仕方をしているとき
- 震えやよだれ、嘔吐などを起こしたとき
特に、口を大きく開けたり、胸を大きく動かして、苦しそうに呼吸している場合や、脱水症状を起こしているときは、至急獣医の診察が必要です。肺水腫や胸水、気胸、横隔膜ヘルニア、腫瘍などの疑いがあります。また、猫によっては喘息から「ぜーぜー」といった荒い呼吸をすることもあります。
猫の鼻や呼吸症状に異常がある場合、考えられる原因は
猫が頻繁にくしゃみをしたり、鼻水や呼吸がいつもより苦しそうにする場合は、感染症を始め、鼻、ノド、気管、肺、心臓など、あらゆる病気の可能性が考えられます。
鼻水、くしゃみ、発熱 | 鼻の中に異物がある、猫伝染性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症などの伝染性の呼吸器系疾患、アレルギー疾患、腫瘍など |
咳 | 気管支炎、肺疾患、胸水、横隔膜の異常、心疾患など |
猫伝染性鼻気管炎や、猫カリシウイルス感染症の場合、人間の風邪に似た症状とともに、目ヤニや目が赤いなどといった症状を伴うことも多くあります。猫の平均体温は38.4~38.8℃と言われていますが、猫の鼻が乾燥しているときは、発熱している可能性があります。変だなと感じたら、体温計をお尻にはさみ、測ってみてください。ただし、猫が眠っているときや、寝起きのときは乾燥していることが通常なので、起きて活動しているときに確認するようにしましょう。
感染症や伝染性呼吸器疾患は、悪化すると命に関わることもありますが、目の異常のところでも書いた通り、混合ワクチンの接種によって予防できるので、できれば定期的な接種をしておきましょう。
熱中症の場合はすぐに冷やすこと
呼吸器や内臓などに異常がある場合以外にも、熱中症やケガ、貧血によって鼻や呼吸に異常が起こることもあります。特に夏場、暑い場所に長時間いると、熱中症になりやすいので、少しでも様子がおかしいと感じたら、まず体を冷やし、すぐに病院へ連れていきましょう。他にも、呼吸とともに舌や唇の色を確認し、白っぽいようであれば、貧血の可能性があります。
猫の目、耳、口、鼻の異常はあらゆる病気のサイン
愛猫の「健康な状態」を把握しておくことが早期発見につながる
猫の目、耳、口、鼻の異常は、ちょっとした炎症から、重症まであらゆる病気のサインである可能性があります。それぞれの症状によって疑われる病気は異なりますが、少しでもおかしいと感じたときは、なるべく早く病院へ連れていくことが大切です。中には深刻な症状で、命に関わる場合や、すぐに治療が必要なケースもあるからです。
そして、どの部分も、猫の普段の様子を知っておかないと、異常に気付くのに時間がかかってしまいます。だから、もし猫が病気になっても、なるべく早く気が付けるように、日々コミュニケーションを取り、猫を観察したり、健康な状態がどんな様子かを、把握しておきましょう。さらに、ワクチン接種など、できる予防はして、猫の健康を守ってあげてください。
猫の目、耳、口、鼻の異常から疑われる病気と、あらわれる症状とは
- 目が赤い、目ヤニが出ている、涙が出ているなどの異常は、結膜炎や角膜炎、アレルギーといった炎症や、細菌、ウイルスに感染している可能性などが考えられる。感染症のリスクは、混合ワクチン接種で防げるものもある。
- 耳のニオイ、汚れは外耳炎が起こっている可能性が高い。特に出血や黒や黄色の耳アカが見られるときはすぐに病院へ。猫の耳掃除は、健康であれば基本的には不要なので、お手入れしすぎないことも大切。
- 口臭や歯茎の色が赤いとき、出血している場合は口内炎の可能性あり。歯茎が白っぽい場合は貧血が起こっているかも。粘膜が青白かったり、黄色い場合は、深刻なケースである可能性が高いので、すぐに病院へ。
- 猫の口は、子猫のうちから慣れさせて、毎日触って歯磨きできるようにしておくことがベスト。
- 頻繁にくしゃみをしたり、鼻水が垂れる場合は呼吸の様子もチェック。苦しそうに呼吸をしている場合は、感染症や呼吸器系の異常だけでなく、肺や心臓に疾患がある場合など、あらゆる可能性が考えられるので、すぐに病院へ。