猫の便とともに、おしっこからも病気を発見できることがあります。今回は、猫のおしっこをチェックするときに気を付けておきたいことや、異常があった場合どんな病気が疑われるかについてご紹介します。
猫のおしっこの色が異常なとき
いつもと違う色のときは気を付けて観察しよう
猫のおしっこの色は、トイレ砂によって判断しづらいこともあるかもしれませんが、いつもの色を把握しておくことで猫の異常に気付けるでしょう。一般的に異常が起こっている可能性が高いとされるおしっこの色について見ていきましょう。
猫のおしっこ、注意したい色は?
猫のおしっこが次のような色の場合や、いつもと違い様子がおかしい時はすぐに病院へ行きましょう。
- おしっこの色が赤色や褐色のとき
- おしっこの色が濃い黄色やオレンジ色のとき
- おしっこに血が混じっているとき
- いつものおしっこの色と違うし、猫の元気がないとき
猫のおしっこの色から考えられる病気とは
猫のおしっこが赤や褐色、濃い黄色やオレンジのときは次のような病気の可能性があります。
おしっこの色 | 鑑別 | 考えられる病気 |
赤や褐色 | 血尿、ヘモグロビン尿 |
血尿は泌尿器や生殖器で出血している可能性が高い。 ヘモグロビン尿の場合は中毒症状の可能性がある。 |
濃い黄色やオレンジ(泡まで黄色い) | ビリルビン尿 | 胆管の閉塞障害や胆石、肝機能の低下(肝炎、肝臓がん)による影響や、遺伝的体質による可能性がある。 |
血尿は腎臓や膀胱、尿管、尿道や、オスであれば前立腺、メスの場合は子宮などから出血した場合に起こります。ヘモグロビン尿は、血色素尿と呼ばれ、体内で短い時間に大量の赤血球が破壊され、肝臓や脾臓で処理が終わる前に赤い色素がおしっこの中に排せつされることを言います。血色素尿の原因は、フィラリア症やヘモプラズマ症、バベシア症などが原因で、猫で起こることは稀です。ただし猫でも、タマネギ中毒や、薬物中毒などによって起こすことがあります。
また、ビリルビン尿は、「ビリルビン」と呼ばれる「胆汁色素」が尿に混じる状態です。胆汁は食べ物に含まれる脂肪分の消化を助ける役目を持ち、肝臓で作られ胆のうに蓄えられています。食事を摂ると胆汁は小腸に流れ込み、消化を助けます。通常は役目を終えると、便に混じって体外へ排出されます。しかし、何らかの原因によって胆汁の循環に障害が起こり、排せつができなくなると直接血液中に増えてしまい、尿として排せつされます。
尿が濃い黄色のときは他の部分もチェック
尿が濃い黄色の場合は、黄疸の影響がある場合があります。尿の色が濃い黄色やオレンジのときは、白目や歯茎の色が黄色くないかもチェックしましょう。ビリルビンが何らかの原因で通常通り排せつされなくなると、肝臓から心臓へと血液で運ばれ、全身に循環し、体が黄色くなるからです。黄疸は深刻な病気が進行している可能性があるため、すぐに診察を受けることが大切です。
猫のおしっこの量がいつもより多い・または出ないとき
いつもより量が多いときや1日以上出ていないときも要注意
おしっこがいつもより多い場合は多飲多尿などの可能性があります。おしっこの色と同じく、猫のおしっこの量は、トイレ砂によって分かりにくいこともありますが、固まる砂であれば、大きさを判断の目安にしましょう。また、尿が出ないことも問題です。1日以上でないときは、命に関わることもあるのですぐに病院へ行きましょう。
猫のおしっこの量で注意したいポイントは?
猫のおしっこの量を見て、注意したいポイントは次の通りです。
- いつもよりおしっこの量が多く、食欲不振
- おしっこがべたべたしている
- おしっこの量が多く、嘔吐もしている
- 脱水症状を起こしている
- 1日以上おしっこをしていないとき
量とは少し違いますが、べたついた尿であれば糖尿病を疑いましょう。さらに、1日以上おしっこをしていない以外にも、嘔吐や脱水症状を起こしている場合はすぐに病院に行きましょう。
猫のおしっこの量から考えられる病気とは
猫のおしっこの量が多い場合、全く出ない場合に考えられる病気は次の通りです。
おしっこの量 | 考えられる病気 |
多い | 多飲多尿 |
出ない | 腫瘍や尿結石、急性腎不全、オス猫の場合は尿道閉塞など |
多飲多尿は慢性腎不全の兆候であることが多くあります。慢性腎不全は、腎臓の機能が低下し体に必要な水分やミネラルの吸収ができなくなり、老廃物をうまく取り除けません。おしっこの量が増え症状がすすむと、嘔吐や食欲不振、ホルモンの分泌異常から貧血が起こり、体に必要なたんぱく質が排せつされて脱水症状から衰弱化してしまいます。猫の場合、年を取るにつれ起こりやすくなります。
反対に尿が全く出ないケースでは、腫瘍や尿結石などの可能性以外に、急性腎不全により、尿が全く作られない状態になっている場合も考えられます。急性腎不全の場合、数日で命に関わるような状態になることもあるので注意が必要です。それでなくとも3日以上排尿出来ないと、尿毒症から命に関わる問題になるのでとても危険です。
猫が何回もおしっこにいくとき
頻繁にトイレに行くときはおしっこが出ているか確認を
何度もトイレに行く場合、排せつスタイルを取っているだけで、おしっこが出ていないこともあります。さりげなく、トイレに行く回数や量のチェックをしましょう。
猫が頻繁にトイレに行くとき、注意したい様子は?
猫が何度もトイレへ行く様子が見られたら、早めの診察が必要です。他にも次のような様子がないか確認しておきましょう。
- 猫が何度もトイレに行くが、少ししかおしっこが出ていないとき
- おしっこを出すとき苦しそうにしている・鳴き声をあげる
- おしっこが出づらそうで、元気もなく食欲もないとき
- おしっこが出づらそうな上、嘔吐しているとき
- おしっこが出づらく、ぐったりしているとき
猫が頻繁にトイレへ行く場合考えられる病気とは
猫が何度もトイレを往復し、さらにおしっこがちょっとしか出ていない場合は、次のような病気の可能性があります。
- 排尿障害
- 頻尿
- 膀胱炎など炎症による残尿感
猫の1日の排尿回数は個体差があるので、愛猫が1日どのくらいトイレを使うか把握しておくと、病気にも早く気がつくことができます。
病気の早期発見のために!猫のおしっこは毎日の健康チェックに欠かせない
少しでもいつもと違う様子を感じたら早めに病院へ
猫のおしっこの色や量、回数は固体差があり、普段の水分摂取量やご飯の量、運動量、ストレスなどによっても異なります。そのため、まずは愛猫の健康な状態を把握しておくことが大事です。そして、少しでもいつもと違う色や量、あるいは頻繁にトイレに行き排せつスタイルを取るなどの様子を感じたときは、早めに病院へ行きましょう。特に、おしっこが全く出ない状態は、数日で命に関わることもあるので危険です。
また、トイレが汚いことがストレスになったり、多頭飼いの場合自分以外の猫が使うことでトイレを使えなくなる猫もいます。常にトイレは清潔を保ち、多頭飼いの場合は1匹に1つのトイレを用意してあげることも、余計なトラブルを防止するために効果的です。猫が落ち着いてトイレができる環境を作った上で、飼い主も猫の様子をこまめにチェックして病気に早く気付ける環境を整えましょう。
猫のおしっこの色や量、回数から考えられる病気やトラブルとは
- 猫のおしっこの色が赤や褐色のときは出血している可能性があり、濃い黄色やオレンジのときは黄疸が関係していることがある。特に濃い黄色やオレンジのときは、白目や歯茎の色などもチェックしよう。
- おしっこの量が多い場合は、多飲多尿の可能性がある。食欲不振など他の症状も出ていたらすぐに病院へ。
- おしっこがべたべたしているときは糖尿病を疑おう。
- おしっこが全く出ない状態が1日以上続くと危険。腫瘍や尿結石以外に、急性腎不全の可能性もあるのですぐに病院へ連れていこう。
- 何度もトイレに行くものの、おしっこが出ない、量が少ないというときは炎症や排尿障害を疑い、すぐにかかりつけ獣医の診察を受けよう。