猫と触れ合う時間は、飼い主にとって幸せな時間ですが、実は猫にとっても同じことです。スキンシップは、猫をリラックスさせるだけでなく、健康を守ることにもつながります。今回は、スキンシップがもたらす効果と、抱っこ嫌いでスキンシップが取りづらい猫との接し方についてご紹介します。
スキンシップは愛情の証
猫も人もリラックスした状態になれる
スキンシップは、人だけでなく、猫にも安心感を与え、リラックスした状態に導きます。猫にとっては、スキンシップを取ることは、愛情の証でもあります。
飼い主を母猫のように思っている
猫は毛づくろいをする習慣があります。毛づくろいは元々、子猫時代に、母猫から体を舐めてもらうことから始まっています。子猫は、母猫から体を舐めてもらうことで安心し、体を舐めてもらいながら、母猫に寄り添って眠ります。成猫となっても毛づくろいをするのは、猫にとって精神安定剤の役目を果たしているからです。そして、飼い主に対しても、スキンシップをとることで、母猫に対する安心感を、飼い主に求めている部分があると考えられます。
スキンシップがもたらすいい効果
スキンシップを取ることは、健康を守るために効果的です。スキンシップを取っている間、リラックスしたり喜びを感じることで、脈拍や血圧が下がり、消化液や成長ホルモンの分泌を促進する効果が期待できるからです。毎日猫と触れ合う時間を作るだけで、猫はもちろん、飼い主自身の健康にとってもいい効果が生まれるのは、素敵なことですね。
猫からのアピールを見逃さないこと
スキンシップが大切といっても、猫の性格は気まぐれな部分があります。飼い主が「スキンシップをしたいな」と思って触ろうとしても、猫は「そんな気分じゃない」と逃げてしまうケースもあることでしょう。そのくせ、飼い主が猫に関心を持っていない時ほど、構ってほしいというアピールをしてくることも多くあります。だからスキンシップを取る上で大切なことは、猫からのアピールを見逃さず、チャンスを活かすことです。
例えばスキンシップを求めているとき、猫は次のような行動を取ることがあります。アピールを感じたら、優しく声をかけて、そっと撫でてあげましょう。
- しっぽを垂直に上げて、体をこすりつけてくる
- 飼い主の膝に乗ってきたリ、目の前に陣取る
- 喉を鳴らしている
- 前足でフミフミしてくる
猫のしっぽの動きは、猫の気持ちを察するのに有効です。しっぽがピンと垂直に立った状態で、体をこすりつけてくる場合は、飼い主に対して愛情を示している証拠です。そして、「構ってほしい、甘えたい」という要求の表れであることも多くあります。さらに、飼い主がソファに座って本を読んでいるときや、パソコンをしようと椅子に座ったときなどに、猫が唐突にやってきて邪魔をする場合も、構ってほしいというアピールだと考えられます。
同時に、喉を鳴らしたり、前足をフミフミしてくるようであれば、安心して甘えている証拠です。子猫は、母猫とのコミュニケーションを喉を鳴らすことで取り、前足でフミフミして授乳を促します。そして、成猫になってからも、母猫と過ごしていた時の名残で、甘えるときには、喉を鳴らしたり前足をフミフミすることがあります。猫の方から甘えてくれる時は、飼い主としては、気が済むまで甘えさせてあげましょう。
スキンシップは猫の健康管理に必要なこと
いつもと違うところがないか、チェックするのを忘れずに
スキンシップは、お互いが愛情を感じたり、リラックスするためだけのものではありません。飼い主としては、スキンシップによって、猫の体や様子に異常がないかをチェックするために必要です。だから、スキンシップを取っている間も、喜びを感じつつ、どこかおかしなところがないか、神経を張ることも忘れないようにしましょう。
猫の体でチェックしたいこと
スキンシップを取っている間、猫の体に次のような異常がないか、確認するようにしましょう。
- 皮膚にデキモノや、変な腫れはないか
- フケが出ていないか、脱毛していないか
- 目ヤニや、異常に涙が出ていないか
- 鼻水が出たり、詰まっている様子はないか
- 耳の中が汚れていないか、ニオイはしないか
- 口臭がきつかったり、歯は歯茎に異常はないか
この他にも、なでようとすると嫌がったり、痛そうにする場合も、ケガや病気をしている可能性があります。毎日スキンシップを取ることで、猫のいつもと違う様子にも気づきやすくなりますし、体重の変化や発熱の気配を感じられることもあります。
猫の体の異常から考えられる病気
猫の体をチェックして、いつもと違う様子が見られるときは、次のような病気の可能性を疑い、獣医の診察を受けましょう。
部位 | 疑われる病気 |
皮膚 | 皮膚腫瘍、扁平上皮癌、肥満細胞腫、乳腺腫瘍、リンパ腫など |
毛 | アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏症、日光過敏症、ストレスによる脱毛、ノミによるアレルギー、食事性アレルギーなど |
目 | 結膜炎、角膜炎、緑内障、白内障、流涙症、まぶたのケガ、眼瞼内反症など |
鼻 | 鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、鼻出血など |
耳 | 外耳炎、中耳炎、耳ダニ症、耳血腫など |
口 | 口内炎、歯周病など |
脈拍や呼吸もチェックしよう
猫を抱っこしたときは、脈拍や呼吸も、いつもと変わりないかチェックするようにしましょう。それぞれの測り方と、おおよその平均回数は次の通りです。
測り方 | 1分間あたりの平均回数 |
脈拍数は、猫の太ももの内側にある血管を使い、手を当てて測る。猫がじっとしていないときは、15秒間だけ測り、その数を4倍して推測する。 | 120~140回/分 |
呼吸数は、猫のお腹や胸に手を当て、上下する回数を数える。 | 20~30回/分 |
回数については、個体差があるので、目安として捉えて測ってみてください。
抱っこが嫌いな猫とのスキンシップ
猫が寄ってくるまで待ってみる
猫の性格も個体差があり、触られることが好きな猫もいれば、嫌いな猫もいます。健康チェックをするためには、抱っこができれば一番いいですが、嫌がる猫を無理に抱っこすると、余計寄り付かなくなる可能性があります。そのため、飼い主としては、猫の方から寄ってきてくれるまで、何もしないで待っていることが一番の解決策です。
猫の方から触ってくるのを待つ
抱っこや触られることが嫌いな猫でも、自分の方から近寄ることには抵抗がないケースが多いです。そして、なるべく猫が近寄りやすいように、飼い主は猫に対して「無関心」を装うことが大切です。目を合わせてもいけません。猫の世界では、目を合わせることは「敵意」として受け取られるからです。
そして、猫が近寄ってきても、手を出すのは避けましょう。猫からすると、「近づいたら急に上から手が出てきた!」とびっくりして、また逃げる可能性大です。猫に触るのは、猫が近寄ってきて、飼い主のそばで眠りだしたときを狙いましょう。眠っている間に、そーっと優しくなでることを繰り返しているうちに、徐々に猫も触られることに慣れてくれるはずです。
無関心を装ってこちらから近づいてみる
猫がなかなか近寄ってくれないときは、猫のリラックスしているときを狙って、こちらから近づいてみましょう。ポイントは、猫と目を合わせず、「無関心」を装いながら猫の近くに座ることです。そして、さも偶然手が触れてしまったかのように、手の甲や腕を猫に触れるようにしてみてください。手の平や指を差し出すと、猫が嫌がる可能性が高いので、最初は手の甲や腕を使う方がハードルが低くなります。
なるべく猫が怖がらない触り方から始めよう
猫を触るときは、上から手を出すとびっくりして、逃げてしまうことがあります。そのため、触るときは、猫のアゴの下の方から手を出すようにしましょう。お尻の近くや、アゴのあたりは、比較的触ると喜んでくれることが多いので、まずはそのあたりを優しくなでることからスタートしてみてください。
スキンシップは猫の体と心の健康に必要不可欠
猫が甘えてきたときを狙ってたっぷりコミュニケーションを取ろう
猫とのスキンシップは、猫も人も安心し、穏やかな気持ちで過ごすためには、欠かせない日課の一つです。そして、飼い主としては、スキンシップは精神的な安定剤としてだけでなく、猫の体に異常がないかをチェックするタイミングにもなります。猫のケガや病気は、早期発見が回復の第一歩なので、なるべく早く異常を見つけてあげることが重要だからです。
猫が触られることに慣れていると、動物病院に行ったときにも、診察がスムーズに行えます。だからできるだけ、小さいうちからスキンシップを取るようにしましょう。ただし、猫の性格によっては、触ったり抱っこをするのを嫌がるケースもあります。嫌がるときは、無理じいせず、猫の方から近づいたり、なるべく猫が緊張しないような触り方をするよう、意識しましょう。そうすれば徐々に猫も、自分の方から甘えてきてくれるようになるはずです。
猫とのスキンシップはメリットがいっぱい!抱っこ嫌いでも焦らず待とう
- 猫とのスキンシップは、お互いにリラックス効果や安心感を生み出し、健康にいい影響が与えられる。
- スムーズなスキンシップは、猫からのアピールを見逃さないこと。
- スキンシップをとりながら、猫の体に異常がないかチェックしよう。特に皮膚、毛、目、耳、鼻、口の様子や、脈拍、呼吸に異常がないかは確認しよう。
- 毎日スキンシップをとることで、猫の体重の変化や、発熱の気配、ケガや病気の早期発見につながる。
- 抱っこ嫌いの猫の場合は、無理強いしないことが大切。猫の方から寄ってくるのを待つか、リラックスしているときを狙って、こちらからなるべく無関心を装って近づき、そっと触れることから始めよう。