犬は犬種によって、かかりやすい病気があります。特に純血種と呼ばれる、狭い範囲で交配が繰り返された犬の場合は、特定の病気になりやすい傾向があります。今回は、人気のある犬種を中心に、どのような病気にかかりやすいのかについて見ていきましょう。
純血種を飼うなら高い確率で病気になる心の準備をしておこう
「絶対かかる」とは限らないが可能性は高い
まず、純血種がなぜ病気にかかりやすいのかを知っておきましょう。もちろん、100%絶対病気になるとは限らないようですが、可能性が高くなるのにはそれなりの理由があります。そのため、飼う場合はある程度、病気に対する心の準備や覚悟はしておきましょう。
純血種が病気にかかりやすい原因
純血種は、対象となる犬種が持つ「長所」を、より伸ばして安定させるため、狭い血縁の範囲内でのみ交配を繰り返した犬のことです。分かりやすい例でいえば、柴犬がその一つです。血縁関係を限定することは、「長所」を残せる反面、病気などの良くないものも定着しやすくなります。そのため、雑種犬に比べると純血種は病気に対する抵抗力が弱いことが多いのです。
血筋によって病気にかかりやすいことも
純血種だから必ずしも病気になるとは限りませんが、血筋によって可能性が高くなることがあります。もし、純血種の犬をブリーダーから直接購入するという場合は、飼おうとしている犬の親や兄弟に、病気の犬はいないかどうか確認しておきましょう。
病気に強い犬なら雑種が一番
雑種犬は血統を絞らず交配を繰り返すため、一番犬本来の姿に近く、そして病気にも比較的強いと言われています。もし病気に強い犬を飼いたいと思う人は、雑種に勝る犬種はありません。また、寿命だけで見ると、一般的に小型犬の方が、大型犬に比べると長生きの傾向があります。
人気の犬種に見られるかかりやすい病気とは
関節、皮膚、心臓・・・それぞれの犬種によって病気が異なる
犬の種類は数多くあり、私たちが知っている名前だけでも40種類以上あるとされています。その中で今回は、特に人気がある犬種の中から、どのような病気にかかりやすいのか見ていきましょう。
関節の疾患が起こりやすい犬種
膝蓋骨脱臼など、関節に疾患が起こりやすい犬種は次の通りです。
犬種 | かかりやすい病気 |
プードル(トイ、ミディアム、ミニチュア、スタンダード) | 膝蓋骨の脱臼、軟骨形成不全など |
チワワ | 肩関節や膝関節の脱臼など |
ポメラニアン | 膝蓋骨脱臼や肩甲関節の脱臼など |
ヨークシャーテリア | 膝蓋骨脱臼など |
パピヨン | 膝蓋骨脱臼など |
柴犬 | 膝蓋骨脱臼など |
ウェルシュ・コーギー | 股関節の形成不全など |
パグ | 膝蓋骨脱臼 |
ミニチュア・ピンシャー | 肩関節の脱臼、レッグ・パーセス病 |
ラブラドール・レトリバー | 股関節や肩関節の形成不全など |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル | 膝蓋骨脱臼など |
ゴールデン・レトリーバー | ひじ関節や股関節の形成不全など |
ジャックラッセル・テリア | 膝蓋骨脱臼、レッグ・パーセス病(大腿骨頭壊死)など |
関節疾患は、比較的小型犬に多くみられるようです。
ヘルニアにかかりやすい犬種
ダックスフントやミニチュアダックスフント、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークといった腰の長い犬の場合は、椎間板ヘルニアや、頸椎症(首の椎間板ヘルニア)になりやすいです。また、ミニチュア・ピンシャーは鼠径ヘルニアになりやすいとされています。
皮膚疾患にかかりやすい犬種
犬種によっては、皮膚疾患にかかりやすいため、飼う場合はこまめなケアが必要となりそうです。特にラブラドール・レトリバーの場合、関節の疾患と共に皮膚ガン、糖尿病、甲状腺機能低下症などをもっとも多く発生する犬種の一つと言われています。
犬種 | かかりやすい病気 |
プードル(トイ、ミディアム、ミニチュア、スタンダード) | 過敏性皮膚炎など |
柴犬 | アトピー性皮膚炎など |
ラブラドール・レトリバー | 黒色腫や肥満細胞腫などの皮膚ガンなど |
ゴールデン・レトリバー | アトピー性皮膚炎、湿性皮膚炎など |
ボーダー・コリー | 鼻の日光性皮膚炎 |
この他にも、ミニチュア・ピンシャーやジャックラッセル・テリアも皮膚疾患にかかりやすい犬種と言われています。
脳や内臓機能に病気を起こしやすい犬種
命に関わるような重大な病気にかかる可能性もある
脳や心臓の病気は、一度起こるだけでも命に関わる危険が高いですが、元々種類的に、かかりやすい犬種もあるため知っておきましょう。
脳疾患にかかりやすい犬種
てんかんなど気を付けたい脳疾患を起こしやすい犬種は次の通りです。脳疾患も、比較的小型犬の純血種に多く起こる傾向があります。特にチワワやポメラニアン、マルチーズなどは、もともと泉門と呼ばれる、頭頂骨の合わせ目が開いています。しかも最も小さい犬種ですので、決して硬いもので頭をぶつけたり、叩いたりしてはいけません。
犬種 | かかりやすい病気 |
プードル(トイ、ミディアム、ミニチュア、スタンダード) | てんかんなど |
チワワ | てんかん、水頭症など | ポメラニアン | 水頭症が原因の頭蓋破裂など |
ヨークシャー・テリア | 水頭症など |
フレンチ・ブルドッグ | 水頭症など |
マルチーズ | 水頭症など |
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク | てんかんなど |
ボーダー・コリー | てんかんなど |
心臓疾患や呼吸器異常を起こしやすい犬種
脳と同じく、一度発作などが起こると命に関わることもある心臓疾患や、呼吸困難に陥る可能性のある肺疾患などには、特に注意が必要です。
犬種 | かかりやすい病気 |
プードル(トイ、ミディアム、ミニチュア、スタンダード) | 気管虚脱など |
チワワ | 気管虚脱など |
ポメラニアン | 動脈管開存症など |
フレンチ・ブルドッグ | 肺動脈弁狭窄など |
ミニチュア・シュナウザー | 心臓の拍動異常による洞房結節性失神など |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル | 僧房弁閉鎖不全症など |
肝臓、腎臓の病気にかかりやすい犬種
肝臓や腎臓は、消化を助けたり解毒・排毒作用を行う重要な器官ですが、犬によっては元々病気になりやすい犬種があります。
犬種 | かかりやすい病気 |
ヨークシャー・テリア | 肝性脳症(門脈シャント)など |
シー・ズー | 腎皮質形成不全、腎形成不全などの腎臓障害 |
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク | 尿結石など。特にオスは急性尿道閉塞を起こしやすい。 |
ビーグル | 尿道裂など |
その他気を付けたい病気
この他にも、耳や目、口など、犬であればかかる可能性がある病気でも、純血種の場合、さらに症状が出やすいものについてご紹介します。
耳のトラブルが起こりやすい犬種
犬種 | かかりやすい病気 |
柴犬 | 外耳炎など |
マルチーズ | 外耳炎など |
ジャックラッセル・テリア | 難聴などの聴覚障害 |
ボーダー・コリー | 難聴などの聴覚障害 |
外耳炎は基本的に多くの犬がかかりやすい病気の一つで、タレ耳の犬の場合は特にこまめなケアが必要と言われています。ですが、ピンと立った耳がかわいらしい柴犬でも起こりうる病気なので、耳のチェックは怠らないようにしましょう。また、ジャックラッセル・テリアの場合、遺伝的に難聴などの聴覚障害を起こしやすいと言われています。
目のトラブルが起こりやすい犬種
犬種 | かかりやすい病気 |
プードル(トイ、ミディアム、ミニチュア、スタンダード) | 白内障など |
チワワ | 緑内障、角膜浮腫など |
ダックスフント・ミニチュアダックスフント | 眼瞼外反症、緑内障、進行性網膜萎縮など |
ヨークシャー・テリア | ドライアイなど |
パピヨン | 逆まつ毛、眼瞼内反症 白内障など |
シー・ズー | 角膜炎、逆まつげ、まつげの乱生、進行性網膜萎縮など |
フレンチ・ブルドッグ | 眼瞼内反症、眼瞼外反症など |
柴犬 | 角膜炎など |
マルチーズ | 眼瞼内反症など |
ラブラドール・レトリバー | 白内障など |
ビーグル | 小眼球症をともなう白内障など |
この中で特にダックスフンドは、網膜の異常や小眼球症が多発しやすく、白内障など目の病気にかかりやすいと言われています。また、シー・ズーなどのように、顔が平べったく眼が大きい犬は、元々眼の病気にかかりやすいとされています。さらに被毛が眼球を傷つけたり、角膜が炎症を起こしやすいとも言われています。目をこすりすぎて眼球が飛び出すこともあるので注意が必要です。
口のトラブルが起こりやすい犬種
犬種 | かかりやすい病気 |
チワワ | 口蓋裂など |
ダックスフント・ミニチュアダックスフント | 口蓋裂など |
フレンチ・ブルドッグ | 口蓋裂など |
パグ | 口蓋裂、口唇裂、軟口蓋過長症など |
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル | 口蓋裂など |
特にパグの場合、先天的な問題として、口蓋裂や口唇裂を起こしやすい傾向があります。
愛犬のかかりやすい病気を知っておこう
それぞれの犬種に合わせたケアが大切
今回ご紹介した病気以外にも、甲状腺機能や、泌尿器系に異常が出やすい犬種もありますが、どの場合も必ずしも発症するとは限りません。ですが、愛犬が純血種であれば、遺伝的に病気になりやすいのは確かです。それぞれの犬種に合わせて、適切なケアをすれば、犬もより健康で暮らせる手助けになるのではないでしょうか。
犬の種類によってはかかりやすい病気がある
- 純血種は雑種に比べると病気にかかりやすい傾向がある。
- それぞれの純血種によって、関節、皮膚、脳、心臓、呼吸器など、疾患が起こりやすい部分が異なる。
- 愛犬のかかりやすい病気を知っておくことで、日々の生活でも注意がしやすくなるはず。適切なケアをして、犬が健康で長生きできる手助けをしよう。