愛犬の様子を観察していて、急にやせたりお腹がぽっこりしてきたときは、病気の可能性があります。今回は、犬の体型や様子の変化から疑いたい病気のリスクについてご紹介します。
犬の急なやせ方で考えられる病気と原因
心当たりのないやせ方に要注意
犬が急にやせる時は、体の中で何か異常が起こっている可能性が高いです。心当たりがないのに、急にやせた場合に考えられる病気のリスクと、その原因についてまとめました。
栄養が消化・吸収できていない
急にやせる原因の1つ目は、栄養の消化不良・吸収不良です。ご飯を食べると、唾液や胃液、膵液、胆汁によって消化、分解されます。分解された栄養は、主に小腸で吸収されます。しかし、その途中で問題が起こると、うまく消化・吸収ができず、栄養が流れてしまい、体全体が痩せてしまうことがあります。
- 消化液の分泌異常
- 腸の吸収機能の異常
- 腸の粘膜に異常
消化の途中で異常が起こった場合、下痢を伴うことが多いので比較的発見しやすいですが、中には通常便でも問題があることがあるので、油断できません。特に超粘膜に問題があって吸収不良を起こしている場合は、手術で細胞を採取して検査をしないとわからないこともあります。消化不良の場合は、「消化酵素剤」と呼ばれる消化を助ける薬を服用すれば、よくなることが多いですが、吸収不良だと慢性化しやすく、治療が長引く可能性があります。
栄養がうまく使えていない
栄養が腸まで運ばれても、肝臓に問題があると、うまく使えないまま流れてしまいます。肝臓に問題があるケースとしては、具体的に次のような可能性が疑われます。
- 肝臓がん
- 門脈や肝臓血管走行ルートの異常
- 先天的な機能の問題
- 加齢による肝機能の低下
門脈は肝臓へ運ばれた栄養を、再び全身へと届ける血管の一つです。肝臓だけでなく、それに繋がる血管に問題があることでも、栄養がうまく伝達できなかったり、未処理のまま流れてしまう可能性があります。肝臓に問題がある場合は、一般的にサプリメントや食事療法による治療が行われます。ただし肝臓がんの進行度や、加齢による機能低下の具合によっては、完全回復が難しいケースもあります。
栄養が消失している
腎臓に問題が起こると、尿などによって栄養が漏れて消えることもあります。腎臓に問題がある場合、次のような病気が疑われます。
- ネフローゼ症候群
- タンパク漏出性腸炎
どちらも、消化されたたんぱく質が尿に漏れてなくなってしまうという病気です。タンパク漏出性腸炎の場合は、原因が見つかれば改善することもありますが、見つからなければ衰弱は免れないと言われています。また、ネフローゼ症候群の場合も、明確な原因が特定しづらい「特発性」と呼ばれる部類だと、栄養補給などの治療しかできない場合があります。
腫瘍ができている
腫瘍、いわゆるガンができるとカロリーが多く消費されます。特に腫瘍は、ブドウ糖を大量に消費すると言われています。腫瘍ができた場合は、可能であれば手術や、抗がん剤の投与が行われます。ただし進行具合によっては、炭水化物を減らし、たんぱく質と脂質の配合を増やすといった食事療法が取られることも多くあります。
それ以外にやせるケースとは
病気以外の理由でも、犬がやせることがあります。次のような心当たりがある場合は、犬の健康を維持するためにも、改善をはかりましょう。
過度なダイエットに注意
肥満は病気の元、と思うことは大事ですが、過度にダイエットさせることも健康によくありません。よくあるパターンとしては、飼い主が肥満を恐れて、知らず知らずのうちにご飯を減らしすぎているケースです。少しづつやせていくので、気づくのに時間がかかることもありますが、ご飯の量でやせたのであれば、ドッグフードの量を増やすことで改善できます。体重コントロールはほどほどが大切です。
年齢とともにやせやすい
人間でも、高齢になるほど痩せる傾向がありますが、犬も同じです。シニア犬になるにつれ、徐々にやせていくことは、年相応と考えられます。ただ、病気の可能性もあるので、判断するためにご飯の量を増やしてみるのがおすすめです。ドッグフードのパッケージに書かれている適正量より少し多めを与えてみてください。体重が増えれば加齢による影響の可能性が高く、そうでなければ別の原因を考えるきっかけになります。
犬がやせているかどうかを見分ける方法
実際に、愛犬がやせているのかどうかを見分けるための、チェックポイントも知っておきましょう。
背中と脇腹をチェック
愛犬がやせているのか、そうでないのかのチェックは、背中と脇腹を触ることで判断できます。触った時に、すぐに背骨や肋骨を感じる場合はやせすぎです。他にも、胸やお尻まわりは普段からチェックしておくと、なでたりもんだりしたときに肉付きの変化を感じやすくなります。
全体はやせているのに、お腹だけぽっこりしている場合
危険な病気の可能性もあるので要チェック
体全体は痩せているのに、お腹だけ膨らんでいるという症状が見られるときも、病気の可能性があります。状態によっては命に関わるケースもあるので見逃せません。
ぽっこりお腹で考えられる病気とは
背中など体つきはやせているのに、お腹だけパンパンという場合、次のような状態が考えられます。
- 腹水貯留
- 内臓のどこかに腫瘍ができている
- 子宮蓄膿症
- 異常な量の宿便が溜っている
メス犬の場合は、避妊手術をしていないと子宮蓄膿症にかかりやすいと言われています。また、便秘がちであれば、宿便の可能性も疑ってみましょう。
叩いて「たぷんたぷん」は腹水の可能性大
お腹に腹水がたまっていると、叩いたとき「たぷん、たぷん」と波を打つのが特徴です。また、前足を持って立たせてみて、ふくらみが下腹部に移動した場合も可能性が高いです。腹水は、毛の長い犬や、毛がモコモコしている犬の場合、発見しづらいです。すぐ気付けるようにするために、普段からお腹を触っておくと、正常かそうでないかの判断がしやすくなります。
腹水は栄養障害や循環障害から起こることがほとんどで、目で見て分かるほどパンパンになっているときは、かなり危険な状態です。放っておくと短期間で命に関わることもあります。すぐに病院へ連れていきましょう。
症状が進行しているケースが多く、危険
何が原因でお腹の張りが起こっているかは、それぞれの犬によって違います。ですが、見た目に分かるほどになっているときは、一般的に症状が、ある程度進行している可能性が高いです。そのため、変だと思ったらすぐに獣医の診察を受けることが重要です。
やたら体をかく場合に考えられる病気
皮膚に何か病気を抱えているかも
犬の様子を見ていて、やたらと体をかいている様子が見られたら、皮膚疾患を抱えている可能性があります。
皮膚炎を起こしていないかチェック
頻繁に犬が体をかくようであれば、まずは皮膚炎が起こっていないかチェックしましょう。炎症が見つかれば、薬などの治療を受けると多くの場合は治ります。
皮膚がダメージを受けてかゆくなることも
皮膚炎を起こしていなくても、犬が体をかき続けるときは「皮膚がダメージを受けてかゆい」ことが原因として考えられます。特定の部位をひたすら舐め続けたり、かじり続けるといった様子が見られるときは、可能性が高いです。同時に、皮膚も赤くなり、毛が擦り切れていることもあります。
犬は何かのきっかけで、元々かゆみなどないのに、体の一部を舐めたり、かじることがあります。短時間で済めばいいですが、そうではなくずっと舐め続けたり、かじり続けると、当然ながら皮膚はダメージを受けます。そして、かゆみが生じ、また舐めたり、かじったりする、という悪循環に陥ります。治療法としては、首の周りに取り付けられる「エリザベスカラー」で、強制的に舐めたりかじったりしないようにすることで、患部の保護を行うことができます。
ストレスが原因になっているかも
かゆみなど感じていないのに、体の一部を舐め続けたり、かじり続けるという行為は、ストレスによって生まれます。犬としては、気分を落ち着かせようとしているのかもしれません。あるいは、犬によっては舐めたりかじったりすることで、飼い主が構ってくれる、と思っていることもあります。
もし、続くようであれば、犬が精神的に不安になっている可能性もあるので、生活環境やコミュニケーションが十分取れているかなど、確認してみてください。
犬の体型や様子に変化が生まれたら病気を疑ってみよう
早期発見に普段からのコミュニケーションも大切
犬の体が急にやせたり、お腹だけ張ってくるなどの体型の変化を感じたときは、病気の可能性を疑いましょう。状態によっては、進行しているケースもあるので、早急に病院へ連れていくことが重要です。中には検査をしないと分からない病気もあるので、変だなと思ったら獣医に相談するようにしましょう。
犬の様子の変化に早く気付くためには、普段からコミュニケーションを取っておくことも大切です。正常な状態を知っていれば、変化があった場合に気づきやすくなります。ぜひ、普段から触れ合う時間を持ち、愛犬が少しでも長く健康でいられるようサポートしてあげましょう。
犬の体型、様子の変化で気をつけたい病気のリスクとは
- 背中と脇腹を触ってすぐに骨が感じられたらやせすぎ。ダイエットや加齢などをしていない場合は病気の可能性がある。
- やせすぎの原因は消化不良や腸の吸収不良、肝臓や腎臓の機能障害、ガンの可能性が考えられる。
- お腹だけぽっこり出ていたり、張っている場合は宿便が溜っているだけのケースもあるが、腹水貯留、腫瘍、子宮蓄膿症の可能性もある。症状が進行して命に関わるような危険なケースも多いので、発見したらすぐに病院へ連れていこう。
- 腹水かどうかの判断は、お腹を叩いて「たぷんたぷん」と波打つかどうかや、前足で立たせたとき下腹にふくらみが移動するかどうかが判断材料の一つになる。
- 皮膚炎も起こっていないのに体をかき続けたり、なめ続けるようであれば、ストレスが原因になっているかも。