人間と同じように、犬もアレルギー反応を起こすことがあります。元気で健康に過ごしてもらうために、どんなアレルゲンがあるのか知っておきたいですよね。今回は犬のアレルギーを引き起こすモノや、その対策方法についてご紹介します。
アレルギーのしくみ
アレルギーの発生はちょっとずつの積み重ね
花粉アレルギーを持っている、という方はお分かりになるかもしれませんが、アレルギーはある日突然発症するものです。これは、アレルギーの原因となるものが少しずつ体内で積み重なり、個人差はあるもののある一定の許容量を超えたとき、その症状が出るからです。
原因は一つとは限らない
アレルギーの原因は「アレルゲン」と呼ばれ、一つとは限りません。いくつかのアレルゲンが、足し算されて起こることもあります。人間の場合は研究が進んで、ある程度原因が特定できる部分もありますが、それでも一度起こしたアレルギーを完全に治すことは難しいとされています。犬の場合はそれよりもさらに、まだまだ分からないことが多いようです。
アレルギーが起こりやすいとされる原因は
分からないことがたくさん、治らないことも多いというアレルギーは、本当に厄介な存在です。できればうちの愛犬はそんな目に遭わせたくない、と思われる飼い主さんがほとんどではないでしょうか。そこで、アレルギーが起こりやすいとされる原因をまとめてみました。調べてみると大きく3つに分けられるようです。
- 環境
- 食事
- 遺伝
このうち環境は、犬を取り巻く周囲の環境、つまり家の中やお散歩や移動中で犬が触れる空気中に浮遊する物質、物理的に接触するモノの全てです。あるいは精神的なストレスが原因になることもあります。
アレルギーの対策方法
残念ながら遺伝によってアレルギーが発症した場合は、治すことがかなり困難です。特にスパニエル系をはじめとする、垂れ耳や耳毛が生えている犬種犬種や、長毛種、それからパグやブルドッグのように鼻が短い犬種は、アレルギーを起こしやすい傾向があります。ただそれ以外の、環境や食事については、人間が注意してあげる事でリスクを減らすことができます。その方法は次の通りです。
- 原因かも、と思えるものを見つける
- 見つけた原因を取り除く、あるいは減らすよう努力する
- 様子を見て症状が治まれば、それを取り除く対策を続け、違ったら次の原因を探す
- やむを得ず、アレルゲンが犬の体についたときは、すぐに洗い流す
犬のアレルギーは、怪しいなと思うものを見つけ、一つずつ地道に取り除いて様子を見ることが一番確実な方法と言われています。血液検査でアレルギーを調べる事もある程度可能ですが、今のところまだ、確実な方法とは言えないようです。
アレルギー症状の具体例
症状は全身どこでも現れる可能性がある
アレルギーの症状は、決まったものがなく、全身どこにでも現れる可能性があります。
一番出やすいのは皮膚
犬のアレルギーの症状を一番見つけやすいのは皮膚です。湿疹が出ていたら、まずはアレルギー性皮膚炎を疑ってみましょう。それ以外にも、耳や目、口の周りが赤く炎症を起こしているときはアレルギー反応の可能性があります。
脱毛やハゲなどにも注意を
少しでも早く気付けるように、普段からよく観察し、いつもよりかゆそうにしているときは、アレルギーかな?と思うことが大切です。
消化器や呼吸器へのアレルギー反応
皮膚以外にも、消化器や呼吸器にアレルギー反応が出ることもあります。胃腸の調子がおかしかったり、呼吸に異常を感じたときは注意して観察し、様子を見て動物病院に連れていきましょう。
アレルギー対策でできること
細やかなケアが第一
アレルギーは起こらないに越したことはありませんが、一旦起こってしまったあとは、飼い主のこまめなケアが大事です。そのためにできることをまとめました。
犬に触れる素材を限定する
もし、皮膚に湿疹などのアレルギーが起こった場合は、まず犬が接触するものを限定するようにしましょう。例えばお腹の部分や四肢、アゴ下などに症状がある場合、その部分が触れる何かに原因があると考えられます。そこで、室内にいるときはサークルの中だけに行動範囲を狭めてみましょう。そうしたことでアレルギーが治まるか、それとも治まらないかか、様子を見ることで原因を探ることができます。
もしサークルの中で過ごして症状が治まれば、サークル以外の家の中に、原因があると言えるでしょう。例えば犬が使っているマットの素材を変えてみるのも一つの方法です。マットを肌に優しいものに替えたり、ダニアレルギーを疑い、マメに洗ってちゃんと陽に干すなどの工夫も。また、フローリングであれば、板と板の隙間を念入りにお掃除したり、一度ワックスを取り除いてみるのもおすすめです。また、体に触れる首輪や衣類の素材を変えてみたり、思い切って無くすと言う選択もあります。
また並行して、散歩のときは草むらを避けるようにしましょう。草むらや木が生い茂ってる場所にはノミやダニ・虫刺されなど、犬にとってアレルギーの原因となるものが多く存在するからです。また、草木自体にアレルギーを起こしたり、花粉で症状が現れることもあるので、なるべく触れる機会を減らす方がベターです。
掃除をこまめにする
犬のアレルゲンは、ダニが関わっていることも多くあります。ダニは敷物や畳、毛布、クッション、ソファなど、家のどこにでもいます。犬が生活するスペースにダニの住処になるような物を置かないようにしたり、こまめに掃除や洗濯をすることで症状が改善することがあります。
掃除はダニだけではなく空気中に漂うアレルゲンを取り除くためにも行いたいことです。全てを取り除くことは難しいですが、掃除は朝いちばんのホコリなどが床に落ちているところをモップや雑巾がけをし、拭き掃除のあとは掃除機で仕上げましょう。
食器や食べ物を変える
プラスチックや金属性の食器を使うと、犬によっては口の周りをかゆがるケースがあります。人間と同じで金属アレルギーを持っているかもしれません。そういう場合は、割れないようなどっしりした陶器製の食器を使ってみましょう。
それでもアレルギーが続くようであれば、違うドッグフードに変えてみましょう。例えば「除去食」と呼ばれるドッグフードにしてみるのも一つの方法です。この除去食は、普通のドッグフードに比べて使用される食材が特定されていたり、原材料の種類が少なく作られたものです。
他にも、体内で分解されたとき、アレルギー反応を起こさない程度の分子の大きさを保つ、「加水分解食」と呼ばれるドッグフードを与える方法もあります。ただしこれは一般には売られていないため、購入したい場合はかかりつけの獣医に相談してください。
食事については、ドッグフードを変えて効果が表れるまでに2~3カ月かかります。そのため、すぐに効果が感じられない、と諦めて次の方法を試すのではなく、長期的に様子を見て考えるようにしましょう。ただドッグフードを変えた途端にアレルギー症状が出なくなった。という報告も少なくはありません。
ストレスは万病の元
ついつい掃除や食事ばかりを頑張ってしまいそうですが、犬の三大アレルゲンの中に、ストレスがあることを忘れてはいけません。人間でもストレスは病気を引き起こすと言われていますが、犬の場合も同じです。次のような環境は、精神的なストレスになる恐れがありますので注意しましょう。
- 狭い場所で何頭も飼う
- 他の動物や飼い主から暴力を受ける環境にある
- 日中、誰もいなくなることが多い
犬を室内で飼う場合、大型犬なら最低8畳のスペースを用意して2頭まで、小型犬であれば6畳に3頭までが限界と言われています。これより狭いスペースだったり、行動が制限される限られたスペースで何頭もの犬を飼うと、イライラして犬同士でケンカしたり、ストレスもたまります。また、しつけの一環だとしても、暴力は犬にとっても大きなストレスになります。
さらに、犬は基本的に群れで生活する動物です。お留守番をきちんとできる子もいますが、そうではない性格の子だと、1人にされる時間が大きなストレスになることがあります。犬の置かれた環境を見直し、自分がしつけをしている姿を振り返り、犬のストレスになっていないかどうか考えることも大切です。
アレルゲン除去は地道な努力が必要
怪しいと思ったらすぐに対策をとろう
犬のアレルギーは、まだまだ分からないことや、なかなか治らないことも多いのが現実です。だから怪しいと思うものを見つけては、地道に一つずつ取り除くことが第一です。血液検査を受ける場合も確実に分かるとは言えないので、目安として捉えましょう。
犬のアレルギー対策でできることは、まずは生活環境を見直すことです。散歩のルートや体に触れるものを変えてみることや、こまめな掃除を行っていつも清潔な環境を作ってあげましょう。また、生活環境自体がストレスになっていないかも見直す必要があります。
それ以外に食事内容や、食器を変えてみるなどの工夫も大切です。そして、いち早くアレルギー症状に気づくためには、日々のコミュニケーションも大切です。かゆそうにしていたり、同じ箇所ばかり舐めていたり、くしゃみをよくするような症状を発見したらすぐに対策をとりましょう。時には呼吸器や消化器など、全身にあらわれることもあります。そんなときは、すぐにかかりつけの獣医に相談するなど、素早い対応が求められます。
アレルギー対策は大変ですが、愛犬が元気で長く健康で暮らせるためにも、飼い主として頑張りたいところです。
犬のアレルギー対策と起こりやすい症状
- 犬のアレルギーは生活環境・食事内容・ストレスが原因になる
- アレルギー症状は皮膚や消化器、呼吸器など全身に現れる可能性がある
- 少しでも怪しいなと感じたら、生活環境、体に触れるもの、食事内容を見直したり、掃除をこまめにして様子を見ることが大切
- 食事内容を変えた場合は、2~3カ月の中長期的なスパンで症状の変化を確かめる
- 症状が治まらなければ、次の原因を探し、対策をとる