猫を見ていると、「またやってる~」と思う行動がいくつかあります。今回は、よく見る行動が猫にとってどんな意味を持っているのかをご紹介します。それらを知ることによって、もっともっと猫と仲良くなることができます。
猫は一日の大半を毛づくろいに費やしている!?
ふと猫の方を見たら、毛づくろい中。「さっきもしていたのに、また?」なんて思ったことありませんか?実は猫が過ごす一日のうち、毛づくろいをしている時間が半分近くあるのです。
どんなときによく見られる?
一日の中で必ずと言っていいほど毛づくろいをする、決まったタイミングがいくつかあるのでご紹介します。
食事のあと
ご飯を食べたら口の周りをなめなめ、その後、前足で顔を拭きます。そのまま全身を毛づくろいすることもしばしば。これは、野生時代の獲物を獲って食べていた頃の名残なのだとか。確かに野生のライオンやトラなどの肉食動物の場合、獲物を獲って食べると顔などが汚れがちですよね。
トイレのあと
トイレのあとは、陰部やおなか周りまで丁寧にグルーミングすることが多くあります。グルーミングには自分のニオイを消す意味もあるそうで、これも野生時代の名残の一つと考えられています。
遊び終わったあと
遊び終わったあともクールダウンの意味があるのか、毛づくろいを始めます。もちろんご紹介したとき以外にも、気づけば体をなめなめ・・・猫は、本当に毛づくろいが好きなのです。とはいえ猫からしてみると、どれも汚れを落としたり、ニオイを消したりとちゃんとした意味をもっているのです。
基本は「清潔」のため
猫はきれい好きな動物なので、毛づくろいをするのもその一環。基本的に、体をきれいな状態に保つため、毛づくろいをします。清潔に保つことで、体にノミやダニがつくのを防ぎます。しかし、毛づくろいをすることは、それ以外にもさまざまな理由があります。
緊張やストレスを紛らわすため
猫を触ったあと、まるでそこを触られたのが嫌だったかのように猛烈に毛づくろいを始められた経験はありませんか?それはもしかしたら、触ったことが猫にとってストレスになったのかもしれません。あるいは大きな物音を立てたあとにも毛づくろいを始めることがあります。これは、毛づくろいをすることにより精神を安定させる効果があるため、ストレスや緊張をほぐし「落ち着こう」としているのです。
体温調節の目的
猫は人間と違って自分で汗をかいて体温を調節することができません。肉球から発汗することはできますが、それだけでは不十分です。そのため、毛づくろいをすることにより体温調節をしています。例えば暑い時期は、唾液を体全体に伸ばすことにより、それが乾燥するときに生まれる冷却効果を利用しています。反対に寒い時期は毛をふわふわにすることで空気を閉じ込め、保温効果を生み出します。
びっくり!毛づくろいでビタミン摂取
人間も太陽の光を浴びるとビタミンDが作られますが、猫の場合は毛づくろいがそれにあたります。日の当たる場所で寝転がって気持ちよさそうにグースカしている猫をよく見かけますが、これは紫外線を浴びるためにしているのです。そして、たっぷり日光を浴びた後に毛づくろいをすることで、生成されたビタミンDを体内に摂取しています。自分でビタミンを作って摂取するなんて、猫もなかなかすごいですね。
自分のテリトリーにはマーキング行動
猫は「自分の縄張り」をとても大切にします。その境目をハッキリさせて、他の猫の侵入を防ぐためにするのがマーキングです。あるいは「ここに元気な猫がいるぞ!」とアピールするために行う場合もあります。
その時々で色んな意味のマーキング
マーキングは、不安になったときやリラックスしたときにも行うことがあります。また、マーキングの方法もその時々で異なります。
大好き!という愛情表現
普段はツンツンして、こちらが遊ぼうとしてもプイッとどこかに行ってしまったり、つれない態度をとる猫。それなのに時々、自分から足にスリスリしてきたり、ぶつかってきたりすることもあります。これもマーキングの一種で、「大好き!」という猫なりの愛情表現なのです。
このスリスリは、時には人ではなく家具やモノに対して行う場合もあります。その場合は「これ、私のもの!」という意味の方が近いかもしれません。アゴや顔の周りからフェロモンを分泌して、自分の縄張りをさらに確実なものにするためにニオイをつけます。すでに自分の縄張りになっている状態をより確実にするためのものなので、この時の猫自身はとてもリラックスした状態です。
他の猫に自分の存在をアピール
猫は爪とぎが大好きです。壁やカーペットなど、爪をとぎやすそうなところを見つけると、ところかまわず爪とぎを始めそうになるので、こちらとしてはヒヤヒヤすることもありますよね。この爪とぎにもマーキングの意味があります。私たちには見えませんが、爪とぎをしているときに肉球からニオイのフェロモンを出しているのです。
そして、そのニオイで「ここに元気な猫がいるぞ!ここは自分の縄張りだ!」とアピールします。突然思い立ったように激しく爪とぎを始めるのには、このような意味があったのですね。
おしっこスプレーは不安やストレスですることも
オス猫の場合、メス猫へのアピールとしていつもより濃いおしっこをすることがあります。これは「おしっこスプレー」というマーキングです。去勢していないオス猫に多くみられますが、去勢後でもする場合があります。
また、それ以外にも不安な気持ちやストレスから急におしっこスプレーをすることもあります。例えば、新しい猫を連れてきた場合に、前からいる猫が自分の縄張りを主張するために行ったりします。この場合は、両者が仲良くなってくれるまで根気強く待ってあげることが一番です。
もしそういった状況でない場合にマーキングをするようであれば、生活環境に何かしらの不満やストレスを感じているのかもしれません。寝る場所やトイレの状態など、猫にとって快適な空間が作られているかどうか、あるいは十分な活動スペースが与えられているかどうか、もう一度確認しましょう。
猫は高いところ、狭いところ大好き!
猫と暮らしていると、なぜか高いところに登ろうとしたり、スーパーの袋や段ボールなど狭いところに入ろうとします。時には思いもよらないスキマに入り込んでいたりして「なんでこんなところに!?」と思うこともありますよね。
どちらも野生本能の名残
高いところが好きなのも、狭いところに入るのも厳しい自然界を生き抜いてきた野生時代の名残と考えられます。
獲物を見つけやすく、敵からも身を守りやすい
猫は狩りをして生活してきた動物です。しかし、群れを作らず単独で生活してきたので、他の大型動物から標的にされる危険もありました。高いところは獲物を見つけるのに適した場所という以外にも、そうした標的になるのを避けるために必要だったと言えます。
獲物を待ち伏せするのと同時に身を隠せるメリット
狭いところが好きなのも高いところと同様、狩りに適していたことが影響しています。獲物に気づかれずに待ち伏せを仕掛けたり、敵が来たときもすぐに逃げるためには狭いところにいる方が有利なのです。捕獲した獲物は、安心して食べられるよう、狭いところに運んで食べていたとも言われています。また、ネズミなど猫が標的にする小動物は、狭い穴ぐらにいることが多く、ビニール袋などをガサガサすると反応するのは、そのときの名残で反応してしまうようです。
体も高いところ・狭いところに合うよう作られている
犬は車酔いをしやすいですが、猫の場合はそのようなことはありません。これは、猫が平衡感覚に優れているからこそと言えます。高いところを平気ですたすた歩くのも、この平衡感覚のおかげなのでしょうね。私たちからしたら怖くて危なっかしい場所こそ、猫にとっては安全な場所なのかもしれません。
また、毛づくろいをしている様子を見ていると分かる通り、猫の体は非常に柔らかいです。特に肩周りは自由に動かせるようなつくりになっています。そのため、一見通れなさそうに見える狭いところにも、顔さえ入ってしまえば首から下は普通より体を細めて通ることができます。これも狭いところに入れるよう、野生時代からそうした体を作ってきたのかもしれません。
野生本能による行動を観察してより楽しく!仲良く!
毛づくろいや高いところ、狭いところを好んだりすることは、野生時代の名残や本能が影響していると言われています。そう思いながら日ごろの行動を観察してみると、更に猫との生活が楽しくなりそうですね。
前後の行動にも注意して、もっと猫と仲良くなろう
猫の行動には何かしらのきっかけや原因があり、何も考えず行動をすることはあまりありません。
- 食後やトイレの後など、何かしたあとは必ずといっていいほど毛づくろいする。
- 毛づくろいは基本的に清潔を保つためだが、時には緊張やストレスを紛らわすためにしていることもあるので注意。
- マーキングにはいろいろな方法があるが、すり寄ってきたときはリラックスしている証拠。絶好のコミュニケーションをとるチャンス。おしっこスプレーをした時は、ストレスを与えていないか、その原因を考えよう。
- 高いところ・狭いところが好きなのは野生時代の名残かも。
毛づくろいやマーキングには、緊張やストレス、不安といったネガティブな要素が含まれていることがあります。あまりにも激しく毛づくろいをしていたり、急におしっこスプレーをするようになった場合は、何か原因がないか見直しましょう。そして、その原因を取り除いてあげることが大切です。そうすることで、よりお互いが楽しく暮らせるようになるはずです。