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ワクチンがない!猫伝染性腹膜炎などの怖い病気に注意しよう

ぐったりした猫

猫の病気予防の一つにワクチン接種は有効ですが、中には有効なワクチンがない怖い病気もあります。その一つが「猫伝染性腹膜炎」です。今回は、猫伝染性腹膜炎の原因や症状とともに、その他にも気を付けたい猫の病気についてご紹介します。

有効なワクチンがない猫伝染性腹膜炎の原因や症状

発症すれば命に関わる怖い病気

猫伝染性腹膜炎は、予防や治療が困難な感染症の一つと言われています。まずはどのような原因で起こるのか、そして症状についてみていきましょう。

体内で突然変異する猫伝染性腹膜炎

猫伝染性腹膜炎の原因菌は、「猫コロナウイルス」です。猫コロナウイルスは、

  • 猫腸コロナウイルス(FECV)
  • 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)

の2種類があります。

猫腸コロナウイルスは、猫が集まるとほとんどの場合に蔓延するウイルスですが、感染しても軽い下痢や軟便などの腸炎を引き起こす程度で、病原性は低いといわれています。

「猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)」は、猫腸コロナウイルスが体内で突然変異を起こした状態のことを言います。

突然変異を起こす確率は、猫腸コロナウイルスに感染した猫のうち、10%にも満たないといわれています。ですが、なぜ突然変異を起こすかは、今のところはっきりと分かっていません。

猫伝染性腹膜炎の感染経路

猫コロナウイルス感染経路は、すでに感染した猫からの感染によるもので、次のような経路が考えられます。

  • 鼻水
  • 糞便
  • 尿
  • 唾液

上記のうち、特に糞便からの感染が大半を占めるといわれています。というのも、コロナウイルス自体は、体外では室温で数分から数時間程度で感染力を失うものですが、糞便中では3~7週間ほど生存することができるからです。

命を奪うほどの炎症を引き起こす

猫伝染性腹膜炎ウイルスは、感染しても発症することはほとんどありません。ですが、一度症状が出ると、ほとんどの猫が命を奪われる怖い病気です。発症した場合、「ウェットタイプ」、「ドライタイプ」と呼ばれる2つの症状のタイプが現れます。

ウェットタイプ ドライタイプ
  • 腹膜炎による滲出液が腹水となっておなかにたまる
  • 腹水によって腹部が腫れあがり、ブヨブヨになる
  • 胸膜炎による浸出液が胸水として胸にたまる
  • 胸水により肺が圧迫され、呼吸困難に陥る
  • 内臓に硬いしこり(肉芽腫)ができる
  • 肝臓や腎臓の機能障害が起こる
  • 脳の神経細胞や脊髄など中枢神経が炎症を起こし、麻痺、けいれん、異常行動などの症状が表れる
  • 眼圧が上昇し、眼球が白濁しぶどう膜炎を発症、失明するケースもある

さらに、ウェットタイプ、ドライタイプ共通の症状として、次のような状態になる可能性があります。

  • 発熱
  • 食欲不振
  • 嘔吐、下痢
  • 貧血
  • 脱水症状
  • 体重減少
  • 黄疸

猫伝染性腹膜炎の治療と予防

「確実な方法」というのが見つかっていない難しい病気

猫伝染性腹膜炎の厄介なところは、治療や予防などの面において、「これなら確実!」といった方法が今のところ見つかっていないことです。現在行われている診断や治療方法、そして私たちができる予防についてご紹介します。

猫伝染性腹膜炎かどうかは血液検査で診断

猫伝染性腹膜炎の症状は、他の病気とも共通する症状もあり、診断が難しい面があります。そのため、症状と合わせてレントゲンやエコー、血液検査などをし、総合的に判断されることが大半です。

猫伝染性腹膜炎かどうかを調べる血液検査には次のような方法があります。ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるようです。

血液検査の項目 抗体検査 遺伝子検査 組織学検査
検査内容 血液中の猫コロナウイルスの抗体をチェックする 腹水・胸水を採取し、猫コロナウイルスを検出する 手術により病変を一部摘出して検査する
メリット 猫コロナウイルスに感染しているかどうかチェックできる 猫腸コロナウイルスと猫伝染性腹膜炎ウイルスを区別できる 現在のところ一番精度の高い診断方法といわれている
デメリット
  • 結果が陽性でも、猫腸コロナウイルスと猫伝染性腹膜炎ウイルスの区別はできない
  • 猫腸コロナウイルスは蔓延しているので健康な猫でも半数は陽性になる
ドライタイプの場合は胸水・腹水が採取できず、診断が困難 手術には全身麻酔が必要なため、猫の負担やリスクも大きい

発症した場合は対症療法しかない

猫伝染性腹膜炎を予防するためのワクチンは、現在のところ開発中で、有効なものが作られていません。そのため、ひとたび猫伝染性腹膜炎を発症した場合は、今のところ対症療法により症状を和らげることが最大限の治療になります。

具体的な対症療法としては、次のようなことが行われます。

  • ステロイド剤の投与:免疫反応を抑制する目的
  • インターフェロンの投与:ウイルスの活性化防止と猫の免疫力アップのため
  • 抗生物質の投与:二次感染を防止するため

他にも、ウェットタイプの症状が出ている場合は定期的に腹水や胸水を抜き、呼吸障害や腎臓の圧迫を軽減します。さらに、輸液や点滴も必要に応じて行われます。

清潔な環境が何よりも大切

猫伝染性腹膜炎ウイルスのもととなる猫コロナウイルスは、普通に生活していても感染する可能性が高いものです。そのため、完全に予防するというのも難しい部分があります。ですが、まずは猫が生活する環境を清潔に整えることが最も大切です。例えば、次のようなポイントに意識をおくことで、予防に繋がります。

  • 猫は室内飼いにする
  • 猫がストレスを感じずに済むような生活環境を整える
  • 多頭飼いの場合は食器やトイレなども清潔に保つ
  • 新しく猫を飼う場合はウイルス検査を事前に行う
  • 感染している猫は他の猫と隔離する

一匹だけで飼っている場合は、猫を完全に室内飼いにすることで、他の猫との接触による感染リスクをほとんどなくすことができます。さらに、猫伝染性腹膜炎が発症する原因の一つには、ストレスがあると考えられています。そのため、ウイルスに感染したとしても発症しないよう、猫にとってストレスのない快適な生活環境を整えることが大事です。

また、多頭飼いの場合は一匹だけで飼うケースに比べ、発症リスクが高くなります。そのため、清潔な環境や、事前のウイルス検査、もしものときは隔離といった措置をとるようにしましょう。頭数が増えるにしたがってリスクも高まるので、面倒が見られる範囲の猫しか飼わないということも重要です。

他にも怖い猫の病気は?

ウイルス以外にも気を付けたい猫の病気

猫伝染性腹膜炎のように、ウイルスに対抗するワクチンがない怖い感染症以外にも、回虫などの内部寄生虫や、ノミやダニによる耳疥癬など、気を付けたい猫の病気はたくさんあります。中でも治療が遅れると怖い病気をいくつかご紹介します。

膿胸

猫伝染性腹膜炎と同じく、治療や予防が難しい病気の一つに、膿胸があります。膿胸は、胸膜が細菌感染を起こすことにより、胸腔内に膿がたまるという病気です。引きおこる原因は、ケガや異物誤食、免疫力の低下の他、血液を介しての細菌感染などのケースがありますが、中にはまったく原因不明という場合もあるようです。

膿胸になると、最初は発熱や食欲低下などの症状が出ますが、膿の量が増えるにしたがって、肺が圧迫され呼吸困難や脱水症状、チアノーゼなどを起こします。

膿を取り除くことが第一の治療方法ですが、呼吸困難やチアノーゼがひどいと呼吸が落ち着くのを待たなければ治療ができないという難しさがあります。他にも抗生物質の注射や輸液などを行います。

治療が早ければ、数日から1週間ほどで回復しますが、衰弱が激しかったり、症状が進行していると敗血症を引き起こし、死に至ることもあります。予防するためには、ケガをしないよう室内飼いを徹底し、他の感染症が起こらないようワクチン接種も行っておくことが大切です。

心筋症

心筋症は、タウリン不足や遺伝、あるいは老化などが原因となり、心臓の筋肉である「心筋」に異常が起こる病気です。「肥大型心筋症」、「拡張型心筋症」、「拘束型心筋症」の3タイプがあり、どれも発症すると治療が難しく、予防もできない難しい病気です。

初期段階ではほとんど症状が見られず、食欲低下など見逃しやすい状態であることも多いため、見つけづらいといわれています。ただ、発症した場合は血圧が低下することが多いことと、チアノーゼが見られる場合は危険な状態なので、すぐに病院へ連れていきましょう。

心筋症は完治する方法がまだ見つかっていないため、輸液や体を温めるなどの対症療法がおこなわれます。場合によっては利尿薬やアスピリンなどが投与されることもあります。

拡張型心筋症の場合はタウリンがしっかり接種できる食事を与えることで、ある程度の予防が期待できます。ですが、他の2つについては有効な予防方法が見つかっていないため、定期的な検診を受けることが大切です。また、発症した場合は心臓に負担をかけないよう、激しい運動を避け、肥満に気を付けることも重要です。

糖尿病や泌尿器疾患

猫も食べ過ぎたり運動不足が続くと肥満になります。肥満は先ほどの心筋症リスクを高めたり、糖尿病や、肝リピドーシス、皮膚病、口腔内疾患、関節炎などの原因になります。

さらに肥満からトイレに行く回数が減り、膀胱や尿道疾患も起こりやすくなります。特発性膀胱炎、尿路閉塞、尿路感染症などのリスクが高まりやすいため、生活環境を整えて運動不足にならないようにするなど、注意が必要です。

また、膀胱や尿道疾患の一部で、猫泌尿器症候群も放っておくと怖い病気の一つです。猫泌尿器症候群は、尿中の結石が尿道などに詰まる病気の総称で、尿の色が赤くなったり、尿が出ないなどの症状が起こるのが特徴です。

猫泌尿器症候群の場合は、キャットフードのマグネシウム含有量が低いものを与えたり、冬場もなるべく暖かく、過ごしやすい環境を整えることで予防できる確率が高まります。

猫を怖い病気から守るには生活環境を整えることが大切

日々コミュニケーションをとって早期発見につなげよう

猫伝染性腹膜炎など、猫がかかると怖い病気はまだまだたくさんあります。そして、今回ご紹介したように、猫がワクチンで予防できる病気は限られており、何が原因で起こるかわからない病気も多く存在します。

猫伝染性腹膜炎のように、一度発症してしまった場合は対症療法しかできないケースもあります。まずはそのような怖い病気を発症しないよう、猫が清潔で快適に過ごせる環境を整えることが大事です。そして、食欲がないなどよくある光景も見逃さず、おかしなところがあればすぐに気づけるよう観察したり、コミュニケーションを取るようにしましょう。

猫伝染性腹膜炎など、猫が感染すると怖い病気について

  • 猫伝染性腹膜炎は猫コロナウイルスの一つ、猫腸コロナウイルスが突然変異して起こる猫伝染性腹膜炎ウイルスが原因。
  • 猫伝染性腹膜炎のワクチンは有効なものが開発されていない状態。
  • 猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染し、発症した場合は今のところ完治は難しく、対症療法が主体となる。
  • 猫伝染性腹膜炎の予防は、室内飼いや清潔な環境など、感染リスクを減らすことが大切。
  • 猫伝染性腹膜炎以外にも、膿胸や心筋症など、予防や治療が難しい病気は多いので、早期発見のために何気ない猫の変化に早く気づけることが大切。

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