人間にとって、雷や花火は夏の風物詩のようなものですが、これを嫌いな犬は多くいます。そして中には、私たちが予想もしなかったような行動をとることがあります。どうして怖がるのか、また突拍子もない行動をとったときのためにできる対策がないか調べてみました。
犬が雷や花火を嫌いな理由とその行動
個体差があるが、基本は苦手
犬に限らず、動物は大きな音のするものが苦手です。苦手な理由は、防御本能が働くためと言われています。例えば掃除機の音や、ヘリコプターなども苦手な犬が多いです。犬にとって、静かな場所でいきなり大きな音が鳴ることは、危険なことと判断されるのです。
耳がいいことも関係?
犬は人間より、はるかに聴覚が優れています。一説によると、犬の張力は人間の400倍とも言われ、特に高い音は人間より4~5倍の音域まで聞こえるそうです。だからもしかしたら、雷や花火の音に、人間には聞こえない音を感じたり、雷の音が、いきなり敵から集中攻撃されたように感じるのかもしれません。
怖がり方には個体差がある
犬が雷や花火を怖がるかどうかというのは、個体差があります。割と鈍感でのんびりしている犬もいれば、慣れると普通になる犬、小さな物音でも怖がる犬などさまざまです。怖がりな犬の場合、ちょっとしたことでも飼い主が予想もしない行動をとることがあるので、注意しなければなりません。
雷や花火が怖い犬の取る行動とは?
雷や花火など、大きな音が怖いと感じる犬は、次のような行動をとる可能性があります。
- パニック状態になって走り回る
- 嘔吐や失禁、てんかん発作を起こす
- 逃走する、逃げ出そうとする
- 呼吸が荒くなる
- 震える
特に注意したいのは、発作を起こしたり、パニックになって走り回ってケガをすることです。いつもの犬ではないので、何をするか分かりません。家具にぶつかってケガをするかもしれないし、熱湯がかかってやけどをするかもしれません。屋外で飼っている犬なら、恐怖のあまり、鎖を引きちぎって逃走することもあります。
雷や花火が鳴った時のための犬の行動対策
怖がったら抱っこをして落ち着かせよう
もし雷や花火が鳴りだして、犬が不安定な状態を見せ始めたら抱っこをしてあげると落ち着くことが多くあります。そのとき、なるべく犬との接触面を広くするようにしましょう。犬にとっては安心感が増すからです。といっても、ギュッと抱きしめたら犬も苦しいので、楽な姿勢をとらせてあげてください。他にも、室内・屋外でそれぞれできる対策をご紹介します。
室内で飼っている場合
まずは犬を室内で飼っているときは、次のような対策を取っておきましょう。
低い位置のガラスは補強
その場でぐるぐるしているだけならまだしも、パニックになって家じゅうを走り回れば、家具にぶつかって出血するなどケガをすることもあります。ガラスが割れたりすると危険なので、犬の高さにある低い位置のガラスには、補強フィルムを貼っておきましょう。泥棒対策のものが売られているので、活用するのがおすすめです。
火の気のあるところは保護
普段から台所など刃物がある場所に入らせないことは大切ですが、火の気にも注意しましょう。夏場はファンヒーターを使われることはないと思いますが、夏場以外でも、ポットややかんなど、熱湯が入ったものにぶつかってやけどをしないよう、置く場所の保護は厳重にしておくことをおすすめします。
犬の避難所を作る
怖がったとき、犬が逃げ込める場所を家の中に作ってあげるのも対策の一つです。キャリーバッグやクレートなど、犬が「ここなら安全」と思える場所を用意してあげましょう。
屋外で飼っている場合
屋外で飼っている場合、怖がっているのに一人にさせているとパニックのあまり逃げ出すことがあります。逃走を防ぐためには、なるべく早めに気付いてあげるか、逃げ出したときのための対策をとっておくことが大事です。
鎖の強度をあげる
屋外で犬を飼う場合、鎖は十分な強度のあるものを用意しましょう。鎖をつなぐ杭なども、時々弱っていないかチェックしてください。犬小屋と連結しているタイプであれば、犬小屋自体の強度も時折確認するようにしましょう。いつもは大人しい犬でも、恐怖を感じたら通常では考えられない力を出すことがあります。つないでいる鎖を引きちぎって逃走するかもしれません。
山などが近い場合、逃走して逃げ込んで、そのまま切り株などに鎖が引っかかって帰れなくなることも考えられます。そうでなくとも、家の前へ飛び出して交通事故に遭うかもしれませんし、そのままどこかへ行ってしまう可能性もあります。
雷や花火が鳴りそうなら家の中へ
逃走を防ぐために、高い柵を設けるのも一つの方法です。ですが、パニック状態にある犬は、それも飛び越えて出ていってしまう可能性があります。そのため、天気を見て、なんとなく嵐になりそうだなと思った日は、その間犬を家の中に入れてあげる方がいい場合もあります。怖がるようであれば、抱っこなどをして、落ち着かせてあげてください。
名札やマイクロチップを取り付けておく
火事場の馬鹿力、というのは犬にもあるようで、時には外へ逃走してしまうケースもあります。万が一のときに備えて、あらかじめ首輪に名札をつけたり、マイクロチップを埋め込んでおくと、逃走しても見つけやすくなります。もし実際逃げ出した場合は、速やかに警察や保健所に連絡しましょう。
出先で雷や花火に遭遇したときの対策は日ごろから
普段から音慣れの訓練をしておこう
あいにく出先で雷や花火に遭遇することもあります。いざというときは、抱っこをして落ち着かせることが一番ですが、普段から音に慣れる訓練もしておきましょう。もちろん、犬を安心させるために、飼い主も落ち着いていることが重要です。
花火の音などを毎日聞かせる
まだ子犬であれば、花火の音を録音したり、DVDを使って慣れさせるという方法があります。訓練する際は、最初は小さな音から始めて、徐々に大きくしていくようにしましょう。ただし、聞かせている最中に、犬に嫌な思いや、恐怖心を与えると逆効果になるので注意をしましょう。
「大きな音はいいこと」と学習させる
食べることが大好きな犬なら、ごほうびを与えることで訓練することもできます。方法は、花火の音が聞こえてきたら抱っこして、落ち着くのを待ちます。落ち着いたらおやつを与えます。そうすれば犬は、「大きな音=いいこと(おやつ)が起こる」と学習し、少しずつ慣れてくれるはずです。
あえて普段通りの様子を見せて放っておく
犬にとって飼い主は「強い」存在でなければなりません。そして、雷が鳴っても飼い主が普段と変わりなくいると、それだけで安心することもあります。だから雷や花火が鳴りだしたとき、犬がそこまでパニックでないようであれば、近くにいるだけにして、あえて構わないという訓練の仕方もあります。
犬を安心させるために、飼い主は普段通りでいることがポイントです。うろたえたりせず、落ち着いた様子を見せると、犬も「飼い主が平気なら怖くない」「飼い主のそばにいれば安全」と分かってくれるはずです。逆に、飼い主がびくびくしていると、犬にも伝わりますから、ドーンと構えるようにしましょう。
犬の雷・花火嫌いは本能!日ごろの対策と訓練で解決しよう
飼い主自身も落ち着いていることが大事
犬が雷や花火を嫌いなのは、動物としての防御本能です。耳の能力も、人間よりはるかに高いので、雷や花火に関わらず、大きな音に対して恐怖心を抱くこともあります。大きな音がすると、怖がりな犬はパニック状態に陥ったり、逃亡を図ることもあります。
犬がパニックになったときのために、室内で飼う場合は犬がケガをしないよう家具などを保護したり、屋外で飼う場合も鎖など、定期的に点検しましょう。とはいえ、雷や花火は、出先でも遭遇することがあります。犬が怖がるようであれば、抱きしめてその場をやり過ごすか、少しでも犬が落ち着いていられるように、日ごろから訓練をすることも大切です。そして、飼い主自身も、落ち着いた様子を見せられるようにしておきましょう。
犬が雷・花火などを嫌いな理由、パニックになったときや逃亡対策
- 犬にとって大きな音は危険なことと本能的に判断し、自分の身を守ろうとする。怖がりな犬は、それでパニック症状になったり、逃亡を図ることがあるので注意。
- 室内で飼う場合は、犬がパニックになって走り回ったとき、ぶつかってケガをしないよう家具などの保護をしておこう。
- 屋外で飼う場合は、鎖を引きちぎって逃げ出さないよう、定期的に鎖や犬小屋、杭などの確認を。万が一のために、マイクロチップや名札をあらかじめつけておくのも大切。
- 雷や花火でパニックを起こした場合は、抱っこをして落ち着かせよう。屋外で飼っているときは、嵐になりそうな日はあらかじめ家の中へ。
- 毎回パニックを起こさないよう、ある程度雷や花火に慣れさせる訓練もしよう。そのために飼い主自身もうろたえず、落ち着いている姿を見せられるようにしよう。